プロジェクトベースドラーニングという言葉を人材育成や研修の文脈で聞くことも多いのではないでしょうか。
プロジェクトベースドラーニングとは、実際の課題や問題を解決するために、プロジェクトを通して学習する方法で、近年、教育やビジネスの分野で注目されている学習法の一つです。
しかし、プロジェクトベースドラーニングとは具体的にどのようなものなのでしょうか?また、なぜ今、この学習法が重要なのでしょうか?
この記事では、プロジェクトベースドラーニングの概念や特徴、DX人材育成やその研修における活用方法やメリットについて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
プロジェクトベースドラーニングとは

課題解決型学習とは
課題解決型学習とは、学習者が実際の課題や問題に取り組むことで、学習内容を理解する学習法です。
課題解決型学習では、学習者は、課題や問題の分析、解決策の考案、実行、検証、評価などのプロセスを経験し、このプロセスを通して、知識だけでなく、思考力や判断力、表現力、協働力などの能力を養います。
課題解決型学習のメリットは、学習者が自分の学習や課題に責任を持ち、主体的に学習することができることです。
アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、学習者が能動的に学習に参加することで、学習内容を理解する学習法です。
アクティブラーニングでは、学習者は、教育者や指導者からの一方的な指示や情報伝達に頼らず、自分で学習の目標や方法を設定し、学習の過程や結果の振り返りを行います。
アクティブラーニングのメリットは、学習者の学習に対する意識や態度を変えることができることです。
受動的な学習だけでは、学びは深まらないことが多く、経験学習という概念をもとに、自身が能動的に学習することが推奨されています。
[参考リンク-企業研修で活用すべきアクティブラーニングとは!?メリット・デメリットからDX人材育成での具体例まで徹底解説!]
プロジェクトベースドラーニングの概要
プロジェクトベースドラーニングとは、課題解決型学習の一種で、具体的な問題や課題を自分で見つけて、その解決に向けて学習を進める方法です。
自らが設定した問題や課題をプロジェクト化し、推進するため、アクティブラーニングの要素も含まれます。
この学習方法は、以下のようなメリットがあります。
- 表現力や思考力が身につく
- 知識の定着率が高まる
- 応用力が育まれる
- 実践的な能力が養われる
プロジェクトベースドラーニングは、自分の興味や関心に基づいて学ぶことができるので、学習意欲も高まります。
また、プロジェクトチームの中で、他の人と協力して問題を解決することで、コミュニケーション力やチームワーク力も身につきます。
プロジェクトベースドラーニングは、現代社会で求められる多様な能力を育てる学習方法なのです。
プロジェクトベースドラーニングが注目されている背景
プロジェクトベースドラーニングが注目されている背景としては、DX人材育成のニーズの高まりが挙げられます。
DXも実際の変革や行動といったアクションが必要な概念であるため、実践的な学習としてのプロジェクトベースドラーニングを行うことが、人材の育成にもDXとしての変革としても活用できるという点が非常に親和性が高いものとなっています。
[参考リンク-ノーコード人材・市民開発者の育成方法とは!?学習の入門からノーコード研修までおすすめのやり方を徹底解説します!]
プロジェクトベースドラーニングの2つの型

チュートリアル型
チュートリアル型のプロジェクトベースドラーニングとは、あらかじめ用意された課題や問題に対して、プロジェクトを実施する方法です。
この場合、プロジェクトの目的や手順、評価基準などは、教育者や研修担当者などが指定します。
学習者は、その指示に従って、プロジェクトを進めていきます。
チュートリアル型のプロジェクトベースドラーニングのメリットは、以下のようなものがあります。
- 学習者と教育担当者がプロジェクトの設計や管理に時間や労力をかける必要がない。
- あらかじめ答えや方法が設定されているため、フィードバックや指導を行いやすい。
チュートリアル型のプロジェクトベースドラーニングのデメリットは、以下のようなものがあります。
- 学習者に、プロジェクトの目的や手順、評価基準などが与えられるため、主体性に欠ける点がある。
- 学習者にとってプロジェクトの内容や難易度が自分のレベルや興味に合わない場合、学習意欲やモチベーションが低下する可能性がある。
- あらかじめ用意した内容に沿った形となるため、形式的なものになりがち。
実践体験型
実践体験型のプロジェクトベースドラーニングとは、実際の現場や社会で起こっている課題や問題に対して、プロジェクトを実施する方法です。
この場合、プロジェクトの目的や手順、評価基準などは、学習者自身が設定し、教育者はそれをファシリテートします。
学習者は、自分で課題や問題を見つけて、プロジェクトを進めていきます。
実践体験型のプロジェクトベースドラーニングのメリットは、以下のようなものがあります。
- 学習者は、プロジェクトの設計や管理に自分で関わることで、課題解決能力や創造性、コミュニケーション能力などを養うことができる。
- 学習者は、プロジェクトの内容や難易度が自分のレベルや興味に合うものを選ぶことができるため、学習意欲やモチベーションが高まる場合が多い。
実践体験型のプロジェクトベースドラーニングのメリットは、以下のようなものがあります。
- 学習者が主体的に目的や手順などを設定していくため、ファシリテートする教育者に求められるスキルが多岐に渡る
- 形式的にならない一方、まとめあげたり、成果を出すことが難しい表面があります。
プロジェクトベースドラーニングのDXでの活用

DXにおけるプロジェクトベースドラーニングの活用
DXにおけるプロジェクトベースドラーニングには2つのセクターがあります。それぞれの内容や活用方法については以下の通りです。
プロジェクトの創出
プロジェクトベースドラーニングをDXに活用するためには、まずプロジェクトの創出が重要です。
プロジェクトの創出とは、DXに関連する課題や問題を見つけて、プロジェクトのテーマや目標を設定することです。
ここでDXにおいて重要なのが、DXのプロジェクトを企画すること自体もプロジェクトとなり得るということです。
デジタルスキル標準のビジネスアーキテクトという人材像があるように、DXを企画したり、施策を立案するということはDXにおいて非常に重要な要素です。
本質的な課題を特定し、解決策を考え、企画としてまとめ上げるプロジェクトの創出自体もプロジェクトとし、ワークショップ形式で実施することで、実課題を解決するためのプロジェクトも創出されますし、さらに連続的な変革を起こすためのプロジェクトの創出の仕方を定着させることにもつながります。
プロジェクトの実行
プロジェクトベースドラーニングをDXに活用するためには、次にプロジェクトの実行が重要です。
プロジェクトの実行とは、プロジェクトのテーマや目標に沿って、プロジェクトの計画や実施や発表や評価を行うことです。
ここでDXにおいて重要なのが、DXのプロジェクトのレベル感が多岐に渡ることを理解しておくことです。
SaaSのツール導入をするプロジェクトなのか、ノーコードを使ったアプリ開発をするレベルなのか、外部ベンダに委託したスクラッチ開発が必要なのかによって、求められるスキルやコンピテンシーが大きく異なります。
自社にとってどのような変革が必要なのかをしっかりと定義しながら、人材育成とプロジェクトのレベル感の折り合いをつけることが大切です。
DXにおけるプロジェクトベースドラーニングのメリット
この章では、DXを推進していくことと、人材育成としてのプロジェクトベースドラーニングを組み合わせることのメリットについて解説します。
学習内容の定着
メリットの1つ目は学習内容の定着です。
DXのインプットとして多いのが、デジタル技術やデータ分析技術です。
これらのスキルはアウトプットをすることで身につき、ともすればアウトプットしないと習得することは難しいようなスキルです。
このような技術的スキルをプロジェクトベースドラーニングとしてアウトプット学習をさせることで、インプットした知識を活用させ、定着を促進することができます。
人材育成とDX推進が両軸で進む
メリットの2つ目は人材育成とDX推進が両軸で進むことです。
これはDXにおけるプロジェクトベースドラーニングの最大のメリットと行っても良いでしょう。
なお、この場合のプロジェクトベースドラーニングは実践体験型であることが前提であり、決まったものを作るようなチュートリアル型ではなし得ないメリットです。
インプットした知識をアウトプットするプロジェクトを実課題をもとにしたものにすることで、学習の定着のためのアウトプットと、DX推進のためのアクションを両軸で進めることができます。
具体的には、ノーコードツールを活用した業務改善を、企画立案の段からワークショップ仕立てで行い、実際にアプリ開発をするところまでを一連のプロジェクトとして推進することなどができます。
まとめ
この記事では、プロジェクトベースドラーニングという学習法について、その概念や特徴、DX人材育成やその研修における活用方法やメリットについて解説しました。
プロジェクトベースドラーニングは、実際の課題や問題を解決するために、プロジェクトを通して学習する方法です。
プロジェクトベースドラーニングを実践することで、あなたはDXに関連する課題や問題に対して、自分で解決策を考え出し、実行し、検証することのできる人材を育成することができます。
ぜひ、この記事を参考にして、DX人材育成とDX推進を両軸で成功させてください。
あなたのDX推進に幸あれ!