VUCAの時代とも言われる現代社会において、個人や組織が直面する問題は複雑で、その解決策もまた多岐にわたります。
この記事では、「成功循環モデル」という概念を紹介し、それを実現するための具体的な方法を解説します。
本記事では、成功循環モデルの基本から、そのモデルが注目される背景、さらにはデジタルトランスフォーメーション(DX)や市民開発におけるグッドサイクルの作り方まで、具体的な事例を交えながら徹底的に解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
成功循環モデルとは!?

ダニエルキムの成功循環モデルとは
成功循環モデルとは、MIT組織学習センターの共同創始者であるダニエルキム教授が提唱した組織学習とシステム思考に基づいた概念です。
このモデルは、まず最初に結果を求めることではなく、良好な関係を築くことから始め、質の高い思考を行うことができるようになり、積極的な行動が喚起され、そして最終的に望ましい結果を得られるとされています。
そしてこれらの要素は循環的に連携し、一つの成功が次の成功へとつながる好循環を生み出すのです。
成功循環モデルの4つの質
関係の質
関係の質は成功循環モデルにおいて、関係の質は非常に重要な要素です。
信頼と相互理解に基づいた関係は、協力的な環境を生み出し、創造的なアイデアや革新的な解決策を促進します。
思考の質
思考の質は、問題解決や意思決定のプロセスにおいて中心的な役割を果たします。
論理的かつ批判的な思考を通じて、より良い選択肢を見出し、効果的な戦略を立てることができます。
行動の質
行動の質は、思考を実際の成果に変えるための鍵です。
計画に基づいた行動と、それを支える強固な意志が、成功への道を切り開きます。
結果の質
結果の質は、行動の成果を評価し、次の行動へのフィードバックとして機能します。
望ましい結果を得ることで、モチベーションが高まり、さらなる成功への意欲が駆り立てられます。
成功循環モデルが注目される背景とDX
成功循環モデルが注目される背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展があります。
DXは投資対効果や具体的なインパクトが求められがちですが、そのような結果をもたらすのは社員一人一人の行動です。
この行動の質をいかに高めるかが重要なため、DXの文脈においてこの成功循環モデルの注目が高まっています。
[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは!?DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します!]
成功循環モデルの2つのサイクル

グッドサイクル
グッドサイクルは、関係の質から始まります。
信頼と協力に基づく関係は、創造的な思考を促し、積極的な行動を引き出し、望ましい結果につながります。
このプロセスは、一連のポジティブなフィードバックループを生み出し、持続可能な成功へと導きます。
たとえば、チームメンバー間の信頼が深まることで、よりオープンなコミュニケーションが可能になり、新しいアイデアが生まれやすくなります。これにより、チームは目標達成に向けて効率的に行動することができ、結果として成功を収めることができるのです。
バッドサイクル
一方、バッドサイクルは、結果の質を求めるところから始まります。
不十分な結果は、モチベーションの低下を招き、消極的な行動を引き起こし、思考の質を損ない、最終的には関係の質まで低下させることになります。
このネガティブなフィードバックループは、失敗を繰り返し、改善の機会を失わせる原因となります。
例えば、プロジェクトの結果ばかりを求めるあまり、チームの士気を低下させ、次のプロジェクトに対する意欲を損なうことになります。これが続くと、チームはリスクを取ることを恐れ、革新的なアイデアを出すことが難しくなり、組織全体の成長が停滞することになるのです。
DXや市民開発でグッドサイクルを生み出すためには

関係の質 – 担当者や取り組みたい人の心理的安全を確保する
関係の質を高めるためには、チームメンバー間の信頼関係が不可欠であり、信頼関係を築くためには心理的安全性を高めることが重要です。
心理的安全が確保された環境では、メンバーはリスクを恐れずに意見を共有し、革新的なアイデアを提案することができます。
このためには、リーダーが率先してオープンなコミュニケーションを促進し、失敗から学ぶ文化を醸成することが重要です。
また、心理的安全性が低い場合、新しい取り組みへの参加は「自分本来の業務を無視した取り組み」として周りに思われるのではないか、という懸念が浮かんでしまいます。
そのような懸念を払拭するためにも、会社としての取り組みに積極的に参加していると思えるように上司からの期待を伝えたり、会社としての取り組みであることをトップマネジメントから会社全体に伝えることが大事です。
[参考リンク-組織に求められる心理的安全性とは!?DX推進での考え方や確保の方法に言及しながらわかりやすく解説します!]
思考の質 – わかりやすいビジョンと思考の質を高めるための教育
思考の質を高めるためには、明確なビジョンの共有と思考の質を高めるための教育が成功の鍵を握ります。
わかりやすいビジョンでは、DXといった漠然としたものを自社としてどのように捉え、どのように活用し、目的の姿である理想像を達成するのかをしっかりと定義し、社員全員にわかりやすく伝えることが重要です。
これにより、社員全員が自分達がDXに向き合う上での考え方のベースができあがり、より活発な取り組みに昇華されるでしょう。
また、思考の質を高めるための教育では、DXや市民開発といったデジタルの文脈や、ビジネス変革や業務効率化といったビジネスの文脈に関する基礎知識をつけることで、思考やアイデアの質が高まります。
行動の質 – 行動に踏み出しやすくなる仕組みづくり
行動の質を高めるためには、行動に踏み出しやすくなるような仕組みづくりをすることが重要です。
これには、イノベーションを奨励するためのインセンティブの提供や、実験的なプロジェクトへの投資によってモチベーションを高めることが含まれます。
具体的な仕組みとしては、社内の業務改善アプリケーションのアイデア募集プラットフォームを作ったり、それらで募集したアイデアを実際に開発するためのワーキンググループを組成したりすることができます。
このような仕組みづくりをすることで、変革をしやすい環境やができ、関係や思考の質も同時に高めることができるでしょう。
[参考リンク-組織や人の変化を後押しするナッジ理論とは!?フレームワークや人材育成への活用までわかりやすく解説します!]
結果の質 – 求める結果を明確に、見える化する
結果の質を高めるためには、求める結果を明確に、見える化することが重要です。
DXプロジェクトや市民開発プロジェクトの成果を測定し、評価することは、グッドサイクルを維持する上で重要です。
目標達成のためのKPIを設定し、それらを定期的にレビューすることで、プロジェクトの進捗を可視化し、必要に応じて迅速に調整を行うことができます。
[参考リンク-人材育成の効果を測るためのフィリップスのROIモデルとは!?市民開発との親和性についても解説します!]
まとめ
この記事では成功循環モデルの概要から、DXや市民開発をする上でグッドサイクルを生み出す方法について解説しました。
グッドサイクルを生み出すことで、DXや市民開発といった組織の変革を効率的に推進することができます。
ぜひこの記事を参考に、DX推進や市民開発を成功に導いてください。