デジタル化が進む中で、企業のデジタルガバナンスの重要性はますます高まっています。しかし、多くの企業がデジタルガバナンスコードの具体的な内容やその適用に苦労しているのが現状です。
この記事では、「デジタルガバナンスコード」の基本から、最新の改訂内容、そして成功へのポイントまでをわかりやすく解説します。
これにより、読者の皆様が抱えるデジタルガバナンスに関する悩みを解決し、DX推進に向けた具体的な行動へと繋げることができるでしょう。
この記事の内容は、経済産業省の公式資料や専門家の意見をもとに構成されており、信頼性の高い情報を提供します。
デジタルガバナンスコードとは
おデジタルガバナンスコードの概要
デジタルガバナンスコードは、デジタル化が進む「Society5.0」において、企業価値を高めるために実施すべき重要な指針を示したものです。
これは、2020年11月に経済産業省によって策定され、2022年9月にはその内容が「デジタルガバナンス・コード2.0」として更新されました。
このガイドラインは、企業の規模や法人形態、個人事業主であるかどうかに関わらず、すべての一般事業者に適用されます。
デジタルガバナンスコードは、基本的事項、望ましい方向性、そして具体的な取り組み例の3つのセクションに分けられており、情報処理促進法に基づいて作られています。
これらのセクションは、国が進めるデジタルトランスフォーメーション（DX）と密接に関連しており、経営者だけでなく、投資家、顧客、取引先、エンジニアを含む多くのビジネス関係者にとって重要な内容となっています。
[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは！？DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します！]
DXを推進するための経済産業省の取り組み
DX認定制度
DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律に基づき、デジタルガバナンスコードの基本事項を遵守する企業に対して国が認定を行う制度です。
この制度は、独立行政法人情報処理推進機構（IPA）が運営する「DX認定制度事務局」によって管理され、企業からの問い合わせ対応や認定審査を担当しています。
DX認定制度の対象は、法人および個人事業者を含むすべての事業者であり、年間を通じて申請が可能です。
この制度による認定を受けることで、企業はDX銘柄やDX Selectionへの選定基準を満たすことができ、DX投資促進税制の利用、中小企業者向けの金融支援措置の活用など、さまざまなメリットを享受することができます。
また、認定企業はロゴマークを使用することで、自社のコミュニケーションやブランディングを活性化させることができます。
[参考リンク-DX認定制度とは！？認定基準やデジタルガバナンスコードとの関連について徹底解説！]
DX銘柄・DX Selection
DX銘柄・DX Selectionは、DX認定事業者の中から、DX推進において優れた取り組みを行っている企業を選定するプログラムです。
デジタルガバナンスコードにおける「基本的事項」はDX認定制度と密接に連携しており、企業がデジタル化の基準を満たしているかを国が認定する重要な基盤となっています。
一方で、「望ましい方向性」と「取り組み例」は、DX銘柄やDX Selection選定のプロセスと結びついており、企業のデジタル化に関する取り組みを評価し、投資家に対する情報提供の指標として機能します。
DX投資促進税制
2021年6月16日に施行された法改正により、DX投資促進税制が設けられました。
この税制は、企業が全社レベルでDXを推進する計画を策定し、主務大臣の認定を受けた上で、クラウド技術などのデジタル関連投資に対して税額控除（5％または3％）や特別償却30％を受けることができる、2年間の時限措置です。
産業競争力強化法の改正は、「ESG×D」の観点を踏まえたものであり、2050年のカーボンニュートラル実現、デジタル化及びDXの推進、新しい日常に適応した事業再構築、そしてサプライチェーンを含むレジリエンスの向上を目指す成長戦略を支援する制度設計がなされています。
これにより、企業は持続可能な成長とデジタル化の加速を図ることが期待されます。
デジタルガバナンスコードで定義される4つの柱
デジタルガバナンスコードの全体像
デジタルガバナンス・コードは、基本事項、望ましい方向性、取り組み例の3部分で構成されており、基本事項は、理念を説明する考え方と、それに基づく企業の取り組みを評価する基準に分けられます。
実践のヒントとしての認定基準に加え、望ましい方向性や具体的な取り組み例も提供されているため、実務への適用や行動変化を促す手がかりとなります。
また、デジタルガバナンスコードは、企業がデジタル化を成功させるための「4つの柱」を定義しています。これらは、ビジョン・ビジネスモデル、戦略、成果と重要な成果指標、そしてガバナンスシステムです。
これらの柱は、企業がデジタル化を通じて新たな価値を創造し、持続可能な成長を達成するための基盤となります。
ビジョン・ビジネスモデル
ビジョンとビジネスモデルの策定は、ステークホルダーへの価値創造をストーリーで提示することを求めます。
経営者は、デジタル技術を駆使して事業環境の変化を予測し、それに基づいて経営ビジョンを構築する必要があるとされています。
さらに、このビジョンに沿って、デジタル化を前提としたビジネスモデルの再設計が求められています。
これにより、企業は変化に強い、持続可能な成長を目指すことができるのです。
戦略
デジタルガバナンスコードにおける戦略の柱は、デジタル技術を活用した戦略の策定、組織構築、人材育成、企業文化の形成、そしてITシステムとデジタル技術の環境整備に関する方策に分けられています。
戦略 企業はデジタル技術を利用した戦略を立案し、ステークホルダーに対してその計画を明示することが求められています。
これは戦略全体の基本的な考え方として位置づけられています。
組織・人材・企業文化に関する方策
デジタル技術を核とする戦略を推進するためには、適切な組織体制の構築が不可欠です。
また、戦略を実現するためには、人材の育成と確保、外部組織との連携や協業が重要な要素とされています。
ITシステム・デジタル技術の活用環境の整備に関する方策
DX推進には、ITシステムやデジタル技術の導入と活用が必要です。
企業は、これらの技術を利用するための環境を整備し、プロジェクト管理、運用、アーキテクチャ、投資計画をステークホルダーに明確に示す必要があります。
これにより、デジタル化の取り組みが具体化し、実行に移されることが期待されます。
成果と重要な成果指標
戦略を実行する際には、「成果指標」という目標達成のための重要な指標が必要です。
これらの指標は、自己評価の基準となり、ステークホルダーへの成果報告にも用いられます。
また、数値で表される定量的な指標だけでなく、質的な側面を評価する定性的な指標も重要視されています。
ガバナンスシステム
デジタルガバナンスコードのガバナンスシステムの柱は、経営者がデジタル技術の活用における戦略的アプローチをどのように取り組むべきかを示しています。
この柱では、経営者が情報発信を含む様々な手段を通じてリーダーシップを発揮し、デジタル化の推進を主導することが強調されています。
また、組織内の各レベルの担当者が協力し合い、現在の課題を理解し、それらを分析して改善策を計画に反映させることが重要とされています。
これにより、組織全体でのデジタル化への取り組みが促進されることを目指しています。
デジタルガバナンスコードの改訂：2.0への変更点
DX人材の重要性
デジタルガバナンス・コード2.0の改訂により、DX認定基準に「デジタル人材の育成・確保」が新たな要素として追加されました。
DX認定を受けるためには、人材育成と確保に関する明確な目標数値を設定し、それを達成することが必須となります。
これは、国と経済産業省がデジタル人材の育成と確保を、デジタル化推進のための重要な課題と位置づけていることを示しています。
この変更は、デジタル化の進展に伴い、適切な人材の育成と確保が企業の競争力を左右する決定的な要因となることを反映しています。
[参考リンク-IPAの提唱するデジタルスキル標準とは！？概要からITパスポートとの違いまで徹底解説します！]
DX銘柄の調査項目の追加
DX銘柄は、東京証券取引所に上場する企業の中から、デジタルトランスフォーメーション（DX）を特に優れた方法で推進している企業を経済産業省が評価し、選定する「DX推進企業」です。
DX銘柄としての評価基準には、デジタル人材の育成・確保や、全社員のデジタルリテラシー向上のための施策が新たに加わりました。
DX銘柄に選出されることは、企業にとって国の認定を受けたという強力なイメージ向上と、株価への肯定的な影響をもたらす可能性があります。
そのため、DX推進企業を目指す企業は、これらの新しい評価基準に積極的に対応し、適応することが求められています。
DXとGX/SXとの関係性
デジタルガバナンス・コードの最新改訂版では、DX（デジタルトランスフォーメーション）だけでなく、ビジネスの新たな潮流であるSX（サステナビリティトランスフォーメーション）およびGX（グリーントランスフォーメーション）との関連性が強調されています。
SXは、企業が単に利益を追求するだけでなく、ESG（環境・社会・ガバナンス）の観点を経営に組み込むことで、持続可能な成長を目指す「持続可能な変革」を指します。
この視点を経営に取り入れることで、デジタル技術の迅速な進化に対応し、組織の持続的な革新を促進することができます。
GXは、社会経済システム全体の変革を通じて、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指す「カーボンニュートラル」の実現を目的としています。
このグリーントランスフォーメーションは、SXで重視される社会の持続可能性と密接に関連し、DXの戦略的な要素として組み込まれています。
これにより、企業はデジタル化を進めると同時に、環境と社会に対する責任も果たしていくことが期待されています。
DX推進ガイドラインとの統合
DX推進ガイドラインとデジタルガバナンスコードが統合され、より一貫性のある指針となりました。これにより、企業はDX推進に関する方針を明確にしやすくなります。
デジタルガバナンスコード実践の手引きとは
デジタルガバナンスコード実践の手引き2.0は、中堅・中小企業に特化した、デジタルトランスフォーメーション（DX）を実現するための具体的なガイドラインです。
この手引きは、デジタルガバナンスコード2.0の一般的な指針に加えて、実際の企業事例を参考にしながら、DX化の具体的なステップが記載されています。
DX化において何から始めればよいか迷っている企業や、具体的な取り組み方がイメージできない場合には、この手引きを参考にしていただくことが非常に有効となります。
特に中小企業においては、デジタル人材の確保や育成が課題となることが多いため、外部人材の活用方法についても詳しく解説しています。
デジタルガバナンスコード実践の手引きにおけるDX成功のポイント
気づき・きっかけと経営者のリーダシップ
成功のポイント1つ目は、気づき・きっかけと経営者のリーダシップです。
ボトムアップで進めることもできなくはないですが、DXを推進する上では予算が必要です。
その予算を出すか出さないかは、トップマネジメントに委ねられているため、トップマネジメントがいかに危機感を持ってデジタルに投資する姿勢を見せられるかが肝になります。
予算はもちろんのこと、経営者がデジタル化の重要性に気づき、積極的に取り組むことで、企業全体にDXの重要性が伝播し、DX推進が加速します。
実践の手引きの中では、ITコーディネーターとの会話を通してデジタル化の重要性に気づいた事例が紹介されています。
社内だけではDXに関するムーブメントを起こすのが難しい場合は外部のITの専門家からの支援を受けることによって、DXの推進のきっかけを作ることもできるのです。
まずは身近なところから
成功のポイント2つ目は、まずは身近なところからです。
DXは、大規模な変革から始める必要はありません。まずは身近な業務プロセスからデジタル化を進め、徐々に拡大していくことが重要です。
特に業務効率化から着手することで、効率化され生み出されたリソースを活用して新たなDXの取り組みを始めることができます。
また、ここで重要なのは小さくてもいいので成功体験を得ることです。
成功体験を得ることで、社内全体の風土やマインドに変化がおこり、そこで起きた小さな変化が、大きな変革への足がかりとなるのです。
外部の視点・デジタル人材の確保
成功のポイント3つ目は、外部の視点とデジタル人材の確保です。
日々進化するデジタル技術を経営に活用するためには、専門的な知見が必要不可欠です。
そのような専門的な知見を、内部で一から育成するのは多くの時間とコストがかかります。
そのため、専門的な部分は、外部からの支援を受けるとで、素早く、小さなリソースでDX推進を加速させることができます。
また、デジタル人材の確保も重要ですが、採用はかなり難しいため、内部人材の育成をする必要があります。
外部の専門家に自社内にどのようにDX推進人材を育成していくべきかを相談すると良いでしょう。
[参考リンク-ノーコード人材・市民開発者の育成方法とは！？学習の入門からノーコード研修までおすすめのやり方を徹底解説します！]
DXのプロセスを通じたビジネスモデル・組織文化の変革
成功のポイント4つ目はDXのプロセスを通じたビジネスモデル・組織文化の変革です。
ビジネスモデルの変革で重要なポイントは暗黙知の形式知化です。
職人的な業務や、塩漬けにされている属人的な業務をデジタル化したり置き換えたりすることで、変化していく世の中に適用しやすくなります。
また、ビジネスモデルを変革していくなかで、組織文化も変革していく必要があります。
今までの定常的なやり方からの変革をする必要があるため、ただ業務を変革しようとしただけでは人がついてきてくれません。
そのため、業務やビジネスモデルと一緒に組織文化も変革する必要があるのです。
[参考リンク-チェンジマネジメントとは！？具体的な進め方やDXや市民開発への活用まで徹底解説！]
中長期的な取り組みの推進
成功のポイント5つ目は、中長期的な取り組みの推進です。
DXは一朝一夕に成し遂げられるものではなく、業務の変革や組織文化の変革など多くの課題があり、それを一つずつ乗り越えていく必要があります。
また、実践の手引きの中の事例でも、AIやデジタルの活用で短期的に大きな成果を出せた事例はひとつとしてありません。
中長期的な視点で取り組みを継続することが、成功への鍵です。
伴奏支援の重要性と効果的な支援のポイント
成功のポイント6つ目は、伴走支援の重要性と効果的な支援のポイントです。
DX推進を加速させるためには、自社の状況だけでなく、業界全体を俯瞰した意見や支援をしてくれる外部の専門家の伴走支援がとても効果的です。
しかし、そこで重要なのは、外部からの支援はあくまでも伴走であり、自社でもしっかりとDXに対して走っていく必要があるということです。
今まで日本ではITベンダーに開発を丸投げして、伴走ではなく車椅子を押してもらうように支援してもらうことが一般的でした。
しかし、DXにおいては、自社内部も含めて変革する必要があるため、伴走型で、自社内の変革もしっかりと支援をしてくれる外部支援者を探しましょう。
まとめ
この記事ではデジタルガバナンスコードについて徹底解説しました。
デジタルガバナンスコードは、企業がデジタル化を成功させるための重要な指針です。
この記事を通じて、デジタルガバナンスコードの基本から改訂された内容、実践のポイントまでを理解し、皆様のDX推進に役立てていただければ幸いです。
あたなのDX推進に幸あれ！
