現代のビジネス環境では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進展し、企業は常に変化に対応するための人材育成が求められています。
しかし、従来の評価方法では、個々の成長やスキルの向上を正確に把握することが難しいという問題があります。
そこで注目されているのが「ルーブリック評価」です。
この記事を読むことで、ルーブリック評価の基本から、DX人材育成における活用法まで、そのメリットとともに具体的な方法を理解することができますので、ぜひ最後までお読みください。
ルーブリックとは

ルーブリックの概要
ルーブリック評価は、教育やビジネスの分野で、個々のパフォーマンスを評価するために用いられる考え方です。
この評価方法は、人材の評価だけでなく、特定のタスクやプロジェクトに対して具体的な基準を設定し、それに基づいて個々の成果を評価します。
ルーブリック評価は、学習者や従業員がどのレベルに達しているかを明確に示し、教育者やマネージャーがフィードバックを提供する際の指標となります。
また、評価される側も自分の成果がどのように評価されているかを理解しやすくなります。
ルーブリックが注目されている背景
ルーブリックが注目されている背景として、アクティブラーニングがあります。
昨今では、教育だけでなく人材育成の文脈で学習者が自ら積極的に学ぶ「アクティブラーニング」がキーワードとなっています。
アクティブラーニングは、アメリカで広く行われている教育方法で、ディスカッションや体験学習などを通じて、学習の効果を高めることができる考え方です。
2010年以降、日本でもアクティブラーニングの導入が進められていますが、その際に問題となるのが、学習の評価方法です。
従来のテスト方式の評価方法では、アクティブラーニングの成果を正しく測ることができません。
そこで、新たな評価方法として注目されているのが「ルーブリック評価」です。
ルーブリック評価は、事前に定めた基準に基づいて、学習者のパフォーマンスを多面的に評価する方法のため、アクティブラーニングの学習を公平かつ透明に評価することができるだけでなく、学習者の自己評価やフィードバックにも役立つのです。
[参考リンク-企業研修で活用すべきアクティブラーニングとは!?メリット・デメリットからDX人材育成での具体例まで徹底解説!]
ルーブリックの構成

評価尺度
評価尺度とは、学習者の学習目標の達成度を測るためのレベルのことです。
評価尺度は、表の一番上の列に数字やアルファベット、単語などで示されます。
評価尺度の数は、評価の目的や難易度に応じて変えることができます。
例えば、5段階評価であれば1~5、難易度を示す3段階評価であれば「初級」「中級」「上級」といったように設定します。
評価尺度によって、それぞれのレベルに対する具体的な期待値が設定され、学習者のパフォーマンスを明確に評価することができます。
評価観点
評価観点とは、評価する対象のスキルや知識、態度などのカテゴリーのことです。
評価観点は、表の左端の列に記入されます。
評価観点は、評価する対象に応じて変えることができ、例えば、ディスカッションを評価する場合は、「傾聴力」「意欲」「リーダーシップ」「トークスキル」「理解力」などが評価観点になります。
評価観点によって、評価の方向性や重点を決めることができます。
評価基準
評価基準とは、ルーブリック表の中で、評価尺度と評価項目が交差する部分に記入する言葉のことです。
評価基準は、各項目における具体的な期待される成果や行動を示します。
評価基準を設定するときは、行動ベースで記述するようにしましょう。
ルーブリック評価では、「ディスカッション」や「実演」といった学習者のパフォーマンスを評価することが多いです。
そのため、評価基準は、学習者がどのような行動をとるべきかを明確に記述することが重要です。
例えば、「傾聴力」の評価基準として、「相手の話を遮らずに聞く」「相手の話に対して質問や感想を述べる」といった具体的な行動を挙げることができます。
ルーブリックのメリットとデメリット

ルーブリックのメリット
ルーブリック評価には、以下のようなメリットがあります。
評価の基準が明確になり、学習者と共通認識を持てる
ルーブリック表には、評価する項目とレベルが事前に定められているため、評価者と学習者が共通の認識を持つことができます。
評価とフィードバックが効率的になる
ルーブリック表を見ながら評価を行うことで、素早く正確な評価ができます。また、評価の結果を具体的にフィードバックすることで、学習者の改善点を伝えることができます。
評価の公平性が保たれる
ルーブリック評価では、評価者の主観や偏見が影響することを防ぐことができます。また、評価の過程や結果を可視化することで、学習者間の成績の差を説明することができます。
ルーブリックのデメリット
ルーブリック評価には、以下のようなデメリットがあります。
ルーブリック表の作成が難しい
ルーブリック表は、評価の妥当性や信頼性を保つために、適切な評価尺度、評価項目、評価基準を設定する必要があります。しかし、これらの設定には高いスキルや経験が必要であり、簡単に作成できるものではありません。
ルーブリック表の改善が必要
ルーブリック評価の実践が始まったばかりの場合、ルーブリック表の内容が最適なものであるとは限りません。そのため、評価の結果やフィードバックをもとに、ルーブリック表を随時見直し、改善していく必要があります。
ルーブリックとDX人材・市民開発者の育成

教育全体の振り返りの指標として活用する
ルーブリック評価は、教育プログラム全体の振り返りに役立ちます。
例えば、教育を受けた受講者がどのような行動ができるようになったかなどをルーブリック表で評価することで、教育の効果を見える化することができるでしょう。
特にDX人材や市民開発者の育成といった文脈では、どのような行動をしたか、どのような変革をしたか、といった項目を評価項目とすることで、学習者が具体的にどんな行動ができるようになればいいかが明確になります。
また、そのような評価を行うことでどの分野で成果が出ているのか、どこが改善点なのかを明確にすることができ、教育プログラムの質を継続的に向上させることが可能になります。
[参考リンク-人材育成や研修に取り入れるべき”振り返り”のフレームワークとは!?]
集合研修・ワークショップに活用する
集合研修やワークショップでは、参加者の理解度やスキルの向上を具体的に評価するためにルーブリック評価を活用することができます。
特にDXや市民開発の文脈では、PBLといった具体的なプロジェクトベースでのワークショップが必須となるため、そのような研修の効果をルーブリックで評価項目を立てることで、具体的に必要な人材や研修内容が明確になります。
これにより、研修の効果を最大化し、DX人材の育成を促進することだけでなく、ルーブリックを作る中で、集合研修の目的を明確化することもできるのです。
[参考リンク-ブレンディットラーニングとは!?DX人材育成への活用やメリットについて解説!]
ルーブリックの作り方

研修・育成の目的を明確にする
最初のステップは研修や育成の目的を明確にすることです。
目的を明確にすることで、評価の方向性や基準を決めることができます。
目的を明確にするためには、学習者に期待することは何かを起点に考えることをおすすめします。
学習者に期待することとは、研修や育成を通じて、学習者がどのような成果や成長を達成することを望んでいるのかを行動として明文化します。
特に、DXや市民開発といった文脈では、具体的にどんな行動をしてほしいか、を動詞レベルで分解して表現すると良いでしょう。
目的を達成するための要素を分解する
目標を達成するための要素を分解することは、ルーブリック評価を作成する上で重要なステップです。
目的の行動を取れるようになるための要素を分解することで、評価の具体性や効果性を高めることができます。
分解するためには、行動を取るために必要なスキルはなにかを起点に考えることをお勧めします。
期待する成果や成長を実現するために、学習者が身につけるべきスキルや知識、態度などを具体的に挙げます。
動詞レベルまで定義した期待する行動が、その行動を取れるために必要なスキルを分解するために役立ちます。
これには、DXや市民開発で言えばデジタルスキル標準を参考にすると良いでしょう。
[参考リンク-IPAの提唱するデジタルスキル標準とは!?概要からITパスポートとの違いまで徹底解説します!]
グループ化してルーブリックを作る
ルーブリック評価を作成する上で重要なステップのひとつが、要素のグループ化です。
グループ化することで、評価の観点と基準を決めることができます。グループ化するためには、以下のような方法をとります。
要素を分類する
分解した要素を、関連性や重要性に応じて分類します。
分類する際には、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)の原則を意識しましょう。MECEとは、分類したグループが互いに重複しないこと(Mutually Exclusive)と、全ての要素がどこかのグループに含まれること(Collectively Exhaustive)を意味します。
MECEにすることで、評価の漏れや重複を防ぐことができます。
[参考リンク-ロジカルシンキングとは!?使われるフレームワークから研修・人材育成の方法まで徹底解説!]
グループに名前をつける
分類したグループに対して、それぞれの特徴や目的を表す名前をつけます。
この名前が評価観点になります。
おさらいになりますが、評価観点は、評価の対象となるスキルや知識、態度などのカテゴリーを示します。
グループ内の要素を整理する
グループ内の要素は、評価基準の言葉になります。
評価基準は、各観点における具体的な期待される成果や行動を示します。
グループ内の要素を整理し、必要なものだけを残します。また、要素の表現を明確にし、評価尺度に合わせて調整します。
まとめ
この記事ではルーブリック評価について、概念化から作り方まで解説しました。
ルーブリック評価は、DX人材や市民開発者の育成において非常に有効なツールです。
ぜひルーブリックを用いた評価項目を使って、DX推進や市民開発の推進を成功に導いてください。
あなたのDX推進に幸あれ!