最近、ビジネス界では日々の変化に対応し、未来に向けて持続可能な成功を収めるために、組織レジリエンスという概念がますます注目されています。
組織がこのような厳しい状況にも適応し、成長を続けるためには、レジリエンスの概念が欠かせません。
本記事では、レジリエンスとは何か、なぜ組織レジリエンスが重要なのか、そしてその構成要素や高める方法について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
組織レジリエンスとは

レジリエンスとは
「レジリエンス(resilience)」という言葉は、もともと弾力、弾性、回復力、立ち直る力などの意味を持つ英単語です。
ビジネスの世界では、この言葉はしばしば「しなやかな強さ」や「折れない心」といった意味合いで使われます。
具体的には、仕事や組織の中で起こるストレスや困難に対して受けとめ、跳ね返し、適応・回復していく力を指します。
レジリエンスは、単なる困難に耐える能力だけでなく、それらの困難に適切に対処し、成長や学びの機会として捉えることも含まれます。
つまり、レジリエンスとは、変化や逆境に直面した際に、しなやかに立ち向かい、前向きに解決策を見つけ出し、成長していく能力を指すのです。
このようなレジリエンスの精神は、個人だけでなく、組織全体にも重要です。
近年注目されている組織レジリエンスとは
組織レジリエンスは、単なる困難に立ち向かう能力だけではなく、さまざまなマイナス要素に負けない打たれ強さを持つ組織のことを指します。
組織や従業員のレジリエンスが高まると、単なるストレスや困難に対処するだけでなく、「ストレスを跳ね返して、さらに成長しよう」というポジティブな思考が働くようになります。
このようなポジティブな姿勢は、組織全体の力を向上させるだけでなく、従業員一人ひとりのモチベーション管理にもプラスに働きます。
結果として、組織全体の成果やパフォーマンス向上につながると言われています。
組織レジリエンスが注目される背景:VUCAの時代
現代はVUCA時代と呼ばれ、ビジネス環境はこれまで以上に急激かつ予測不能な変化の中にあります。
コロナショックやウクライナ侵攻、市場のグローバル化、DX化など、さまざまな要因が複合的に影響し、企業や組織にとって不確実性が増しています。
環境の急速な変化は、人々に大きなストレスをもたらします。従来のビジネスモデルや仕事のやり方が通用しなくなることで、組織や個人が不安や焦燥感に直面します。
このような状況下では、単なる「ストレスに耐える」だけではなく、「変化を受け流すスキル(レジリエンス)」がますます重要になってきます。
組織レジリエンスは、VUCA時代における組織の生存と成長に不可欠な要素となっています。
このようなレジリエンスの精神を持つ組織は、変化に対してより迅速かつ効果的に対処し、競争力を維持することができるでしょう。
組織レジリエンスを構成する要素

心理的安全性の高さ
レジリエンスが高い組織の特徴の1つに、心理的安全性の高さが挙げられます。
心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した組織概念の一つで、組織内で他人の顔色を伺うことなく、オープンな姿でいられる状態のことを指します。
レジリエンスが高い組織では、メンバー同士の信頼関係が強い傾向があり、この信頼関係があるため、心理的安全性も高くなります。
つまり、メンバーは自分の意見や感情をオープンに表明し、誤りや失敗を恐れることなく、率直なコミュニケーションを取ることができるのです。
このような環境が整うことで、メンバーは自信を持って自己表現し、組織全体のイノベーションや問題解決能力を高めることができます。
生産性の高さ
組織レジリエンスの重要な要素の1つは、生産性の高さです。
組織が変化や逆境に直面した際にも、業務が停滞せず、効率的に業務を遂行できることが求められます。
つまり、高い生産性を持つ組織は、変化に対応しやすく、持続的な成果を生み出すことができるのです。
生産性が高い組織では、コミュニケーションが活発であり、情報共有の仕組みが整っている傾向があります。
このような組織では、メンバー同士の信頼性が高まり、組織全体の雰囲気も良くなるでしょう。
目標達成率の高さ
レジリエンスが高い組織では、メンバー一人ひとりが業務への責任感を持ち、目標達成への意欲が強い傾向があります。
このような組織では、目標達成に向けたプロセスが重要です。
メンバーが共通の目標に向かって効果的に作業を進めるためには、計画の立案から共有までを行うことが求められます。
具体的な目標設定と、その目標を達成するためのプロセスの共有は、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。
これによって、組織の目標達成率が高まり、競争力の強化や持続的な成長が実現されるでしょう。
変化への追従力の高さ
近年では、市場や顧客のニーズ、社会の変化に迅速に対応することがビジネスにおいて重要視されています。
新規事業の創出や既存事業の改定・撤廃など、変化に柔軟に対処する決断力が求められます。
しかし、外部環境の変化に応じた企業の変化は、組織内のメンバーにとっては必ずストレスを伴います。
組織が変化に対応するためには、メンバーのストレス耐性が高いことが重要です。
組織レジリエンスを高めるためには、社員一人ひとりが環境変化に適応し、柔軟に行動できるレジリエンスを持つことが不可欠です。
組織レジリエンスを高めるメリット

組織力が高まる
組織レジリエンスが高まると、組織力が向上します。
組織力とは、メンバー同士が団結し協力することで生まれる力のことです。
メンバー同士の結びつきが強化されることで、客観的な視点を持つことが可能になります。
これにより、正当な自己評価が可能となり、組織の強みや課題を客観的に把握することができます。
組織レジリエンスの高まりは、組織内のコミュニケーションや信頼関係の強化にも繋がり、結果として、組織全体の成果や業績を向上させることができます。
このように、組織力の向上は、組織の持続的な成長と競争力強化に不可欠です。
従業員のエンゲージメントが高まる
組織レジリエンスが高まると、従業員のエンゲージメントも向上します。
レジリエンスが高まると、物事を柔軟に捉えることができるようになり、人間関係の円滑化や仕事に対するやりがいの向上に繋がります。
従業員が仕事にやりがいを感じるようになることで、結果的に従業員の満足度も高まるでしょう。
従業員のエンゲージメントが高まることは、組織にとって重要な要素です。
ダイバーシティマネジメントの実現
ダイバーシティマネジメントは、メンバーの個性を受け入れ、それぞれが能力を発揮できる環境を構築することを指します。
このプロセスでは、自らと異なる価値観や優先順位を持つメンバーと協働する方法を学ぶことが求められるため、メンバーには一定のストレスが発生することもあります。
しかし、組織レジリエンスを高めることで、メンバーはストレスに過敏に反応するのではなく、理性的にダイバーシティを受け入れるようになります。
レジリエンスの強化によって、異なる価値観を持つメンバーとの協働による成功体験を早期に経験できるため、ダイバーシティの定着も促進されます。
組織レジリエンスを高める方法

ミッションビジョンバリューの策定と浸透
組織が複雑な課題や逆境を乗り越えるためには、明確なミッション、ビジョン、バリューの策定が不可欠です。
これらを明確にすることは、単に文章化するだけでなく、定期的に提示し、浸透させることも重要です。
組織のミッションやビジョン、パーパス、バリューを徹底的に浸透させるには、まず従業員がこれらに触れ、考える機会を増やすことが肝要です。
さらに、組織のミッションやビジョン、パーパスを一方的に伝えるのではなく、各従業員に自らのミッションや価値観を明確にし、その上で組織のミッションやビジョン、パーパスとの一致点を探ることも重要です。
このようなアプローチによって、組織全体が共通の目標に向かって一体となることが可能となります。
心理的安全性を確保する
次に重要なのは、心理的安全性の確保です。
メンバーが失敗やリスクを恐れることなく、率直な意見やアイデアを提供できる環境を整えることが必要です。
上司や同僚とのコミュニケーションを促進し、信頼関係を築くことで、心理的安全性を確保しましょう。
[参考リンク-組織に求められる心理的安全性とは!?DX推進での考え方や確保の方法に言及しながらわかりやすく解説します!]
デジタル化の推進
最後に、デジタル化の推進も組織レジリエンスを高めるための重要な戦略の1つです。
デジタル化によって、業務プロセスの効率化や情報の共有が促進され、組織全体が迅速かつ正確に情報を収集し、適切な判断を行うことができます。
これによって、新規事業を始めたり、業務プロセスが変更となったときにフレキシブルに対応することができるうようになります。
組織レジリエンスを脅かす2025年の崖

2025年の崖とは
2025年の崖とは、経済産業省がDXレポートにて発表した、デジタル化に載り遅れ、2025年を迎えた時に企業が直面する危機を定義したものです。
2025年の崖では、既存システムの問題が解決されない場合、2025年以降に企業が直面する経済的損失が年間最大12兆円に達すると警告しています。
この「2025年の崖」を乗り越えるためには、企業は既存システムの課題に対処し、データを効果的に活用することが求められます。
また、DXを推進するためには、単なる技術的な変革ではなく、組織全体のマインドセットの変革も必要とされています。
[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは!?DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します!]
技術的負債がレジリエンスを脅かす
特に、2025年の崖で提唱されている技術的負債が組織レジリエンスを脅かす大きな要因となります。
過去のシステムやプロセスに対する投資不足や適切なメンテナンスの欠如によって生じる技術的負債は、組織の柔軟性や迅速な対応能力を阻害します。
また、レガシーシステムを使い続けることで、システムに業務を合わせ続け、業務のスケーラビリティがなくなってしまったり、生成AIや最新のツールとのコラボレーションができなくなったりと、技術負債以上のデメリットももたらしてしまいます。
この技術負債を回避するために、モダナイゼーションをすることが推奨されています。
市民開発で技術負債と2025年の崖を乗り越える
そのような状況に対し、市民開発によるモダナイゼーションで、技術負債や2025年の崖を乗り越えることで、組織レジリエンスを保持する方法があります。
市民開発では、組織内の全てのメンバーが積極的に技術の学習や改善に参加し、共に問題を解決していくことで、持続的にデジタル化を推進することができるため、組織レジリエンスを強化することが可能です。
[参考リンク-市民開発とは!?内製化を目指すための具体的な進め方やメリット・デメリットを徹底解説!]
まとめ
組織レジリエンスは、変化の激しいビジネス環境において、組織が持続的な成功を収めるための重要な要素です。
市民開発によるモダナイゼーションを推進することで、より組織レジリエンスを高めることができるでしょう。