近年、世界はますます変化のスピードが速くなり、予測が困難になっています。新型コロナウイルスの感染拡大や米中貿易戦争、気候変動など、様々な要因が経済や社会に大きな影響を与えています。
このような状況を表す言葉として、VUCA(ブーカ)という言葉が注目されています。
VUCAの時代には、従来の方法では対応できない新たな課題や問題が多く発生します、特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)とVUCAの考え方は切っても切り離すことができません。
では、VUCAの時代にはどのような対応をすればよいのでしょうか?
この記事では、VUCAの概要や構成要素、生き抜くための方法などについて、わかりやすく解説します。
この記事を読むことで、VUCAの時代に備えるための知識やマインドセットを理解することができます。
この記事を参考にして、VUCAの時代にチャレンジするための土壌を作りましょう!
VUCAの概要

まずは、VUCAという言葉自体の概要と意味を解説します。
その後の解説する内容のベースとなる内容なので、少し知っている方も、できれば読み飛ばさずに、しっかりと内容をキャッチアップしてください。
VUCAとは何か
VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧さ(Ambiguity)の頭文字をとったもので、現代社会の特徴を表しています。
VUCAという言葉は、もともと米国陸軍大学で戦争の状況を分析するために使われていましたが、2000年代に入ってからは、ビジネスや経済の分野でも広く使われるようになりました。
VUCAの考え方は、単に環境が変化しているという事実を指すだけではなく、その変化の性質や程度、影響や対応策などを示唆するものでもあります。
VUCAの時代とはどんな時代なのか
VUCAの時代とは、変化が激しく、予測が困難で、複雑で、曖昧な時代のことを言います。
VUCAの時代としてあげられる出来事としては、従来の方法では対応できない新たな課題や問題が発生します。
たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大やワクチンの開発・接種の問題や、AIやIoTなどの技術革新やデジタル化の進展と、それによるワークスタイルやライフスタイルの多様化などが挙げられます。
これらの課題や問題に対応するために、新しい価値観や思考法、行動様式やそれによるイノベーションが必要になります。
DX推進担当者にとってVUCAの時代とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、ビジネスや社会の変革を促進することを言います。
DXは、VUCAの時代において、組織の競争力や持続可能性を高めるための重要な考え方となります。
VUCAの時代におけるDXに必要になるのは、デジタル技術の最新動向や市場のニーズを常にキャッチアップし、素早く変化に対応することです。
特にディジタルディスラプターの存在もVUCAの要素の一つとなるでしょう。
ビジネスモデルはもちろん、業務のオペレーションひとつひとつから、企業自体のイノベーションが必要とされているのです。
[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは!?DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します!]
VUCAを構成する4つの要素

ここからは、VUCAを構成する4つの要素について、それぞれの例とその影響をについて解説します。
Volatility(変動性)の例とその影響
変動性とは、変化のスピードが速く、変化の方向や規模が不安定であることを言います。変動性の高い状況では、予測が困難で、対応が遅れると大きな損失や機会損失を招く可能性があります。変動性の例としては、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられるでしょう。
そもそも人と会うことができなくなるという状態をもたらした新型コロナウイルスは、社会に大きな変動を起こしました。
これにより、経済や社会の不安定化や混乱、変動によるビジネスや組織の競争力や生存力の低下、変動によって与えられたストレスによる個人やチームのパフォーマンスやモチベーションの低下が引き起こされました。
Uncertainty(不確実性)の例とその影響
不確実性とは、未来が不確かで、事実や要因の予測や見極めが困難であることを指します。
不確実性の高い状況では、正しい判断や行動ができないと、リスクや損失を招く可能性があります。
こちらも新型コロナウイルスの感染拡大を例に挙げると、感染経路や予防方法について、多くの説があり、どれが正しいかがわからない状況がまさに不確実性を著しています。
不確実性により、意思決定や計画の困難化や遅延が起こります、例えば、国がワクチン接種を進めているにもかかわらず、接種を迷うような状況が、不確実性による影響の結果です。
Complexity(複雑性)の例とその影響
複雑性とは、状況が複雑で、多様な要因が関係していることを言います。
複雑性の高い状況では、原因と結果の関係が明確でなく、分析や理解が困難であることがあります。
複雑性については、DXを例にとると、ビッグデータの活用をする際に、多くのデータがありすぎて、その要素が相関を持っているのかがわからないような状態が複雑性を表しています。
複雑性により、情報の方や判断に対する混乱が引き起こされ、誤った理解をしたり、誤った対策をとってしまうリスクが発生します。
Ambiguity(曖昧さ)の例とその影響
曖昧さとは、ひとつの事柄に対しての理解や解釈をする際に、情報が不足していたり、矛盾して、人によって解釈が変わってしまうこと言います。
これは複雑性を引き起こす要因のひとつともなっており、1つの情報に対して、受け取れる可能性のある情報が複数ある状態を指します。
例えば、テーマパークで小さい子供が一人で泣いていた場合、多くの人が迷子になっているのでは、と思うかもしれませんが、お店の外でおもちゃを買ってもらえなくて泣いているかもしれませんし、ご飯を待っている間にお腹が空いて泣いているのかもしれませんよね。このように情報が不足していることで、一つの状況や情報に対して受け取れる解が変わることが曖昧さなのです。
VUCAの時代を生き抜く方法

ここまでの説明で、VUCAの内容についてかなり理解が進まれたかと思います。
ここからはさらにそんなVUCAの時代を生き抜く方法について解説していきます。
VUCAの時代に必要なマインドセット
VUCAの時代に生き抜くためには、変化に対する恐怖や固定観念を捨て、柔軟で創造的なマインドセットが必要です。VUCAの時代に必要なマインドセットとは、以下のようなものです。
- 学習力:常に新しい知識やスキルを学び、自分自身を成長させることを目指す
- 変化への適応力:変化に対して柔軟に対応し、チャレンジや失敗を恐れない
- 創造性:既存の枠組みにとらわれず、新しいアイデアや解決策を考え出す
- 協働性:他者とのコミュニケーションや協力を重視し、共通の目標に向かって努力する
これらは、IPAが定めたDXリテラシー標準のマインド・スタンスにも加えられている観点であり、固定観念にしばられず、必要なものをプロアクティブに学習したり、コミュニケーションを重視した組織としての変革を起こせる人材が必要とされていることが伺えます。
[参考リンク-経済産業省が提唱するDXリテラシー標準とは!?策定された背景やITパスポートとの関係まで徹底解説!]
リーダーシップの発揮
VUCAの時代に生き抜くためには、リーダーシップを持った人材が必要です。
リーダーシップとは、自分自身や他者を導き、目標やビジョンを実現するための能力や行動のことを指します。
VUCAの時代に求められるリーダーシップとは、以下のようなものです。
- ビジョン:明確で魅力的なビジョンを持ち、それを共有し、納得させる
- 戦略:ビジョンを実現するための戦略を立て、それを実行し、評価する
- インパクト:自分の行動や発言によって、周囲に影響を与え、変化を促進する
- エンパワーメント:他者の能力や責任を引き出し、自律的に行動させる
VUCAの時代に求められるリーダーシップを発揮するためには、自分自身のビジョンや価値観を明確にし、それに基づいて行動することが大切です。
また、他者との信頼関係やコミットメントを築き、チームワークやコラボレーションを促進することも重要です。
企業としてVUCAの時代に立ち向かうには、周りの人を巻き込んで変革を起こせるリーダーシップを持った人材が必要なのです。
意思決定のスピードと柔軟性の必要性
VUCAの時代に生き抜くためには、迅速に情報を収集し、分析し、判断し、行動する意思決定のスピードと状況や結果に応じて、計画や方針を修正し、変更する柔軟性が必要す。
そのためには以下のようなことが網羅的に必要です。
- データや分析を活用する:データや分析を基にして、客観的に状況を把握し、最適な選択肢を選ぶ
- PDCAサイクルを回す:計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを回して、常に改善を目指す
- プロトタイピングやテストを行う:仮説を立てて、実際に試して、検証する
- フィードバックを受ける:他者からのフィードバックを受けて、自分の意思決定や行動を振り返る
過去の経験や、感覚に基づく判断ではなく、事実やデータに基づいた判断ができ、かつその判断を小さなサイクルで回していくことが非常に重要です。
その小さなサイクルで検証と実行を繰り返しながら、変化の多いVUCAの時代に柔軟に対応していくことができるのです。
リスク管理と適応力の向上
VUCAの時代に生き抜くためには、潜在的なリスクを特定し、その確率や影響を評価し、その対策や回避策を立てるリスク管理をする力と、変化に対して柔軟に対応し、ストレスや困難に耐える適応力の向上が必要であり、そのためには以下のようなことが大切です。
- シナリオプランニングを行う:複数の未来のシナリオを想定し、それぞれのシナリオに対するリスクや対策を考える
- 余裕を持つ:予期せぬ事態に備えて、時間や資源や人員などの余裕を持つ
- レジリエンスを高める:逆境に直面しても耐えられる回復力を持つ
不確実性が高いからといって、全てに対応ができないわけではありません。どんな状態でも対応できるようにシナリオをしっかりと組み立てたり、何が起きても大丈夫なように余裕を持つことが非常に重要です。
VUCAとアジャイルの関連性

ここまで、VUCAやVUCAに対応するためのマインドセットなどについて解説してきました。
ここからは、VUCAの時代を乗り切るためのキーワードとして、アジャイルという概念が用いられることが多いため、VUCAとアジャイルの関連性について解説していきます。
アジャイルとは何か
アジャイルとは、変化に対応するための思考法や行動様式のことです。
アジャイルという言葉は、もともとソフトウェア開発の分野で使われていましたが、現在では、ビジネスや組織のマネジメントやイノベーションにも応用されています。
アジャイルの特徴は、以下のようなものです。
- 顧客や利用者のニーズやフィードバックを重視する
- 小さくて機能的な製品やサービスを素早く提供する
- チームや組織のコラボレーションやコミュニケーションを促進する
- 継続的に改善や学習を行う
アジャイルの考え方や手法は、VUCAの時代において、変化に対応する能力やスキルを高めるための有効なものです。
アジャイルには、さまざまなフレームワークやメソッドがありますが、その中でも代表的なものは、スクラム(Scrum)やリーン(Lean)です。
スクラムとは、チームで協働して、短い期間(スプリント)で製品やサービスの開発や改善を行うフレームワークです。
リーンとは、無駄やムダを排除して、価値の創造に集中する思考法や行動様式です。
アジャイルの原則とVUCAの時代の要求
アジャイルの原則とは、アジャイルの考え方や手法を実践するためのキーワードです。
VUCAの要素に対応するアジャイルの原則は、以下のように考えることができます。
VUCAの要素 | 対応するアジャイルの原則 |
---|---|
不確実性(Uncertainty) | 顧客や利用者のニーズやフィードバックを重視する |
変動性(Volatility) | 変化を歓迎する |
複雑性(Complexity) | 定期的に振り返り、調整する |
曖昧さ(Ambiguity) | 顧客満足を最優先する |
このように、アジャイルという概念は、VUCAの時代にとって有効的な概念であり、アジャイルの考え方を導入することでVUCAの時代に対応することができるようになります。
アジャイルの概念を活用したVUCAへの対応
アジャイルの考え方を適用する場面の例として、新規事業創出が挙げられます。
顧客の需要が刻々と変化するVUCAの時代に、プロダクトマーケットフィットを目指す時には、アジャイルの概念が非常に役に立ちます。
最低限のコア機能を持ったサービスの提供を行い、アジャイルの考え方に基づき、小さく改善を繰り返しながら市場に合わせたサービスに昇華するプロセスを踏むことが、新規事業の成功につながります。
このようなアジャイル的なサービスの提供をデジタルで行う場合は、ノーコードツールなどを使って、効率よく開発を行い、素早く変化に対応することが求められるでしょう。
[参考リンク-アジャイル開発とは!?ウォータフォールとの違いや、メリット・デメリットについて徹底解説!]
まとめ
この記事では、VUCAの時代について解説してきました。また、アジャイルの概念とVUCAの関係についても言及しました。
アジャイルという概念はまとめると、小さく初めて、検証を繰り返しながら状況の変化に合わせていく考え方とも言えます。
このような考え方はVUCAの時代、ともすればDXには非常に重要な考え方になるでしょう。
この記事を参考にしていただき、ぜひDX推進や今後の新規事業の展開にお役立ていただければと思います。
あなたのDX推進に幸あれ!