ノーコード開発やノーコードツールといった言葉は、様々なメディアでも取り上げられており、どこかしらで目にしたことがあるのではないでしょうか。
今回の記事では、ノーコード開発の基本的な知識や特徴、メリットデメリットを徹底的に解説します。
また、ノーコード開発を自分のビジネスやプロジェクトに活用する際の参考になるように、ノーコードが向いていること、向いていないことまで言及しています。
ノーコード開発に興味のある方、DX推進に関わられている方は、ぜひ最後までお読みください。
ノーコードとは?

ノーコードとは、従来プログラミング言語を扱えることが必須だったアプリケーションやWebサイトの作成をプログラミング言語なしで行えることを指します。
ここからは、そんなノーコードについてもう少し深堀りして解説していきます。
ノーコードの概要
ノーコード開発は、近年注目されている新しいアプリ開発の手法です。
ノーコード開発では、プログラミングのコードを書く代わりに、専用のツールを使って、画面上でパーツを組み合わせたり、設定を変更したりすることで、アプリの機能やデザインを作り上げます。
ノーコード開発のツールは、主にクラウドサービスの形で提供されていることが多く、インターネットに接続できれば、どこからでもアプリを開発できます。
ノーコード開発のツールは、さまざまな種類がありますが、まずは概要を知っていただくために、下記の3つのカテゴリで分類しながら解説していきます。
Webサイト作成ツール
Webサイト作成ツールとは、Webサイトのデザインやレイアウト、コンテンツなどを簡単に作成できるツールです。
[Wix]や[WordPress]などがそれにあたります。
Webサイト作成には、通常HTMLやCSS、JavaScriptといった言語でのプログラミングが必要ですが、Webサイト作成ツールを使えば、ドラッグアンドドロップで直感的に自分の好みに合わせてWebサイトを作成できます。
通常Webサイトを作成する際は、自分やデザイナーが作ったデザインカンプと呼ばれるWebサイトの完成イメージ図を、プログラマに依頼し、プログラマが先ほどのHTMLやCSS、JavaScriptを使ってWebサイトにするため、多くの工数やリソースが必要でした。
しかし、そもそもデザインを作っていく部分をノーコードツールを使うことで、作り上げたイメージのままWebサイトを作成することができるのです。
アプリケーション作成ツール
アプリケーション作成ツールとは、Web・モバイルアプリの機能や見た目、ロジック、データベースなどを簡単に作成できるツールです。
例えば、[Bubble]や[Glide]などがあります。
Webアプリ作成ツールは、画面上でボタンやテキストボックスなどのパーツを配置したり、データベースとの連携や条件分岐などの設定をしたりすることで、自分の思い通りのWebアプリを作成できます。
Webアプリの作成には、通常ロジックやデータベースを構築するバックエンドと、見た目やGUI部分を作るフロントエンドのプログラミングが必要となり、また、プログラミングする前段階でも、プログラミング言語やフレームワークの選定、そのプログラムを動かすための環境の設計・構築等、プログラミング以外にも多くの知識や工数が必要です。
また、モバイルアプリを作成する場合には、Webアプリとは別のプログラミング言語を利用することが多く、AndroidであればJAVAやKotlin、iOSであればSwiftやObjectCなどのプログラミング言語の習得が必要です。
アプリケーション作成ツールは、そのような工数を一切省き、プログラミング知識もなしで思い通りのアプリケーションが作れます。
そのため、現場の業務を効率化するためのアプリケーションの作成や、素早い提供開始や、修正・アップデート対応が求められる不確実性の高い新規プロダクトの開発で多く活用されています。
ローコードとの違い
ローコード開発とは、最小限のプログラミング言語のコーディングでアプリを開発できるという手法です。
ローコード開発では、ノーコード開発よりも高度なカスタマイズや拡張性が可能ですが、一定のプログラミングの知識やスキルが必要です。
ローコード開発とノーコード開発の違いは、以下の表にまとめられます。
項目 | ローコード開発 | ノーコード開発 |
---|---|---|
コードの必要性 | 最小限のコードが必要 | コードが不要 |
カスタマイズ性 | 高い | 低い |
拡張性 | 高い | 低い |
プログラミングの知識やスキル | 一定のレベルが必要 | 不要 |
開発の難易度 | 中程度 | 簡単 |
上記のようにローコード開発とノーコード開発は、それぞれにメリットとデメリットがあります。
ローコード開発は、ノーコード開発に比べて、より複雑なアプリや独自の機能を開発できますが、その分、開発にかかるコストや時間が増えたり、プログラミングのエラーやバグに対処する必要があったりします。
ノーコード開発は、ローコード開発に比べて、簡単にアプリを開発できますが、その分、ノーコードツールのプラットフォームに依存したり、カスタマイズの範囲が限られることもあります。
そのため、ローコード開発とノーコード開発は、自分の目的やニーズに合わせて、適切に選択する必要があります。
活用のされ方での違いとしては、もともとプログラミングに関する知識を持っている人が、一定の拡張性やオリジナリティを担保しながらも、低い工数で開発を実現するために、開発工数自体を削減するために使われるのがローコード。
プログラミングの知識をもっていない人がプログラミングの知識の習得なしでアプリケーション作成ができるように、プログラミングに関する知識の習得自体の工数を削減するために使われるのがノーコードです。
ノーコードの流行の理由

ノーコード開発が近年注目されている理由は、主に以下の3つです。
IT人材の不足
ビジネスや社会のデジタル化に伴って、ITシステムの開発や運用に必要な人材が足りなくなっています。
日本では、2020年に約45万人のIT人材が不足していると推計されており、2030年には約79万人にまで拡大すると予測されています。
ノーコード開発は、IT人材でない人々もアプリ開発に参加できるようプログラミングの知識やスキルがなくても開発できるため、IT人材の不足を解消する一助となり、システム開発の効率や品質、イノベーションなどが向上する可能性を秘めているのです。
[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは!?DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します!]
クラウドサービスの一般化
クラウドサービスとは、インターネット上にあるサーバーやソフトウェアを利用することで、自社でシステムの構築や管理をする必要がなく活用できる仕組みです。
クラウドサービスの一般化は、システムの導入や運用のコストや時間の削減、柔軟性や拡張性の向上、セキュリティや信頼性の確保などのメリットをもたらすと言われています。
日本では、2020年にクラウドサービスの市場規模は約2兆円であり、2025年には約4兆円にまで拡大すると予測されているほど、クラウドサービスは注目されています。
ノーコードツールは、主にクラウドサービスの形で提供されており、それで作成するサービスもまたクラウドサービスとしてローンチができます。
ノーコード開発によって、クラウドサービスのメリットを享受できるだけでなく、クラウドサービスの活用範囲や可能性を広げることができるのです。
課題の多様化と複雑化
現在、VUCAの時代とも呼ばれるように、ビジネスや社会において、解決すべき問題やニーズが増えたり、変化したり、深刻化したりと不確実性の高い状況にあります。
課題の多様化と複雑化が進んだことにより、システム開発において、よろ高度なユーザビリティ、パフォーマンス、迅速なマーケットへの対応などを求められるようになりました。
高度なユーザービリティやパフォーマンスを構築し、セキュリティにも配慮したアプリケーションを作成するには一定の工数やリソースが必要になりますが、ノーコード開発を活用することで、プログラミングの知識やスキルがなくても、簡単にアプリを作成できるため、課題の多様化と複雑化に素早く対応することができるようになります。
[参考リンク-VUCAの時代とは?生き抜くための方法やアジャイルとの関連までわかりやすく解説!]
ノーコードのメリット・デメリット

ここまで、ノーコード開発についての概要や概況について解説してきました。
ここからはノーコードのメリットやデメリットに言及していきます。
ノーコードのメリット
まずは、メリットから見ていきましょう。
プログラミングの知識が必要ない
ノーコード開発の最大のメリットは、プログラミングの知識やスキルが必要ないということです。
ノーコード開発では、専用のツールを使って、画面上でパーツを組み合わせたり、設定を変更したりすることで、アプリの機能やデザインを作り上げるため、プログラミングのコードを書く必要がないため、プログラミングの初心者や未経験者でも、簡単にアプリを開発できます。
ノーコード開発によって、IT人材でない人々もアプリ開発に参加できるようになり、アプリ開発の敷居が下がります。
それによって、現場の人が自分たちが抱えている困りごとを業務アプリケーションを作成して解決したりすることができるようになるのです。
開発にかかる費用・時間が削減できる
ノーコード開発のもう一つのメリットは、開発にかかる費用や時間を削減できるということです。
ノーコード開発では、プログラミングのコードを書く必要がないため、開発の工程や工数が減るのは、ここまででお分かりのとおりですが、ノーコード開発のツールは、主にクラウドサービスの形で提供されているため、自社でシステムの構築や管理をする必要がなくなります。
これによって、システムの導入や運用のコストや時間も削減できます。
ノーコード開発によって、開発の効率やスピードが向上し、ビジネスやプロジェクトの競争力が高まるのです。
ノーコードのデメリット
ここからはノーコード開発のデメリットを解説していきます。
ノーコードツールのプラットフォームへの依存度が高い
ノーコード開発の最大のデメリットは、ノーコードツールのプラットフォームへの依存度が高いということです。
ノーコード開発では、専用のツールを使って、アプリを開発します。しかし、ノーコードツールのプラットフォームは、各社が独自に開発しており、互換性や移植性が低い場合があります。
ノーコードツールのプラットフォームが変更されたり、サービスが終了したりすると、アプリの機能やデザインが変わったり、アプリが使えなくなったりする可能性があります。
ノーコード開発によって、ノーコードツールのプラットフォームに縛られることになり、アプリの自由度や持続性が低下する可能性があります。
カスタマイズの範囲が限られている
ノーコード開発のもう一つのデメリットは、カスタマイズの範囲が限られているということです。ノーコード開発では、プログラミングのコードを書かないため、ノーコードツールが提供するパーツや設定に従って、アプリを開発します。
これが先述のメリットを生み出しているのですが、その裏側としてノーコードツールが提供するパーツや設定は、汎用的であるがゆえに、独自の機能やデザインを実現することが難しい場合があります。
しかし、これは技術の進化によって従来よりかなり改善されているツールも登場していますし、そもそもオリジナリティを演出する必要があるアプリケーションを作りたいかどうかなど、ツールの選定基準をしっかりと定めることで回避できるデメリットです。
ノーコードの向き不向き

ノーコード開発は、プログラミングの知識やスキルがなくても、簡単にアプリを開発できるというメリットがありますが、一方で、ノーコードツールのプラットフォームへの依存度が高いというデメリットもあることがわかりました。
それではノーコード開発という手法は、どんな目的やニーズに適しているのでしょうか。
ここからはノーコード開発の向き不向きについて解説していきます。
ノーコードが向いていること
ノーコード開発が向いていることは、以下のような場合です。
プロトタイプやMVP(最小限の製品)の制作
プロトタイプやMVPの制作とは、アプリのアイデアやコンセプトを具体化するために、最低限の機能やデザインを備えたアプリを作ることです。
プロトタイプやMVPの制作は、アプリの開発の初期段階において、アプリの仕様や要件を明確にしたり、ユーザーの反応やフィードバックを得たりするために重要です。
ノーコード開発は、プログラミングの知識やスキルがなくても、簡単にアプリを作成できるため、プロトタイプやMVPの制作にと非常に相性がいいとされています。
ノーコード開発によって、プロトタイプやMVPの制作のコストや時間を削減できるだけでなく、アプリのアイデアやコンセプトを素早く検証でき、ユーザーフィードバックや追加機能の開発も素早く行え、ユーザーニーズにマッチしたアプリケーションを作り上げていくことができるのです。
[参考リンク-MPV開発とは!?アジャイル開発との違いや、具体的な進め方、DX推進におけるメリットデメリットまで徹底解説!]
シンプルな機能やデザインのアプリの制作
シンプルな機能やデザインのアプリの制作とは、アプリの機能やデザインが複雑でなく、ノーコードツールが提供するパーツや設定で実現できるアプリを作ることです。
ノーコードツールが提供するパーツや設定で満足できる状態というのは、アプリの開発の目的やニーズが汎用的であり、ノーコードツールのプラットフォームに依存することに問題がないことを指します。
特に現場の業務を改善するための業務アプリケーションの作成などがこれにあたります。
業務を遂行するために必要最低限のデータと分かりやすい画面さえあれば、目的が達成できるためです。
ノーコードに向いていないこと
ノーコード開発に向いていないことは、以下の3つのような場合です。
複雑な機能やデザインのアプリの制作
アプリの機能やデザインが高度であり、ノーコードツールが提供するパーツや設定では実現できないアプリがこれにあたります。特にデザイン側で非常にこだわりが強い場合などがこれにあたるでしょう。
技術の進化により、複雑なデザインや機能にも対応できるツールは増えてきましたが、やはりスクラッチ開発で作成するアプリケーションとは柔軟性に差があります。
一方で、本当に複雑な機能やデザインが必要かを見つめ直すことも必要です。
実はユーザーが求めているものはノーコードで作成できるもので事足りていた。ということが起きないように、これから開発しようとするものが提供すべき価値や機能をしっかりと見極めることも必要です。
セキュリティやパフォーマンスが重要なアプリの制作
セキュリティやパフォーマンスが重要なアプリでは、アプリのセキュリティやパフォーマンスについて、高い水準や基準を満たす必要がありますよね。
たとえば、個人情報やお金に関する情報を多く扱うようなアプリケーションがそれにあたるでしょう。
そのようなアプリの開発の目的やニーズが厳格であり、ユーザーにとって安全で快適なアプリを作るためには、もしかするとノーコード開発での環境では要件を満たし切れない場合もあります。
ノーコード開発は、プログラミングのコードを書かないため、セキュリティやパフォーマンスに関する細かな設定や調整ができない場合があります。
また、ノーコード開発のツールは、主にクラウドサービスの形で提供されており、自社でシステムの構築や管理をすることができない場合があります。
これによって、セキュリティやパフォーマンスに関するリスクや不安が増える可能性があるのです。
しかし、逆に言えば、ノーコードツールによってセキュリティーやパフォーマンスがある程度担保されていることでもあるので、作りたいアプリケーションがどの程度厳格な要件が必要なのかをしっかりと整理する必要があります。
ノーコードツールのプラットフォームに依存したくないアプリの制作
アプリの機能やデザインについて、ノーコードツールのプラットフォームに縛られることなく、自由に変更や移植ができるアプリを作りたい場合がこれにあたります。
ノーコード開発は、プログラミングのコードを書かないため、ノーコードツールのプラットフォームに依存することになり、万が一ノーコードツールのプラットフォームが変更されたり、サービスが終了したりすると、アプリの機能やデザインが変わったり、アプリが使えなくなったりする可能性があります。
このような持続性の観点もしっかりと加味した上でツールの選定をすることが非常に重要です。また、Webサイトを作成するツールであれば、それをプログラミング言語としてエクスポートできる機能も備えているかどうかも重要なポイントとなるでしょう。
[参考リンク-【成功事例9選】上場企業でのノーコードアプリ開発の成功事例を紹介!]
まとめ
ノーコードとは、プログラミングの知識やスキルがなくても、Webサイトやアプリケーションなどの開発ができるという手法でした。
向き不向きはあるものの、これからDXを推進していく場合は、これからプロダクトを作り上げていく場合は、特に現場起点で業務効率化を図るためのアプリケーション作成ができたり、新規サービスのMVPを作り上げやすかったりと、非常に相性の良い手法ということがわかりましたね。
ノーコードを活用できるか否かの見極めや、ツールの選定方法については、下記記事でがっつりと解説しているので、ぜひ参照してください。
あなたのDX推進に幸あれ!!