ビジネスの現場で長年にわたり愛用されてきたエクセルですが、時代の変化と共にその限界も見え始めています。
多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中で、「脱エクセル」がもはや避けて通れないテーマとなっています。
では、なぜ今「脱エクセル」が必要なのでしょうか?
本記事では、エクセルからの脱却がもたらすメリットと、それを実現するための具体的なツールや方法について、詳しく解説していきます。
脱エクセルとは!?

「脱エクセル」とは、エクセルに依存した業務からの脱却を示した言葉です。
これは、エクセルの使用による問題点を解消し、より効率的で柔軟な業務運営を目指すための動きであり、DXのうちのデジタイゼーションやデジタライゼーションにあたる動きでもあります。
[参考リンク-「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の違いとは?経済産業省の定義や具体的な事例まで徹底解説!]
脱エクセルが求められる背景〜エクセル活用の課題〜

業務の属人化
エクセル活用の課題1個目は業務の属人化です。
エクセルは使い手によって使い方が大きく異なり、特定の人物に業務が依存してしまうことがあります。
例えば、特定の社員が作成したエクセルファイルにしか対応できない業務プロセスがある場合、その社員が退職したり休暇を取ったりした際に問題が生じます。
マクロや関数が壊れてしまう
エクセル活用の課題2個目はマクロや関数が壊れてしまうです。
業務で使用されているエクセルファイルには、関数やマクロが組まれているものも多いでしょう。
しかし、データの入力規則や入力制限などの設定までされている場合は少なく、その場合、作業中の何かの拍子で組まれている関数やマクロを壊してしまうことがあります。
特に大規模なエクセルファイルでは、修復が難しい場合もあり、業務に差し支えが出るケースも多いでしょう。
業務用エクセルのブラックボックス化
エクセル活用の課題3個目は業務用エクセルのブラックボックス化です。
先ほど出たように、マクロや関数が組まれているエクセルでは、作った人以外がどのような仕組みになっているかを把握できていないことがほとんどです。
特に複雑なマクロや関数が多用されていると、他の人が理解・引き継ぎをするのが難しくなるため、ブラックボックス化してしまいます。
部署移動や退職、休暇などで仕組みを理解している人がいなくなってしまって作業が進まないということも起こってしまうのです。
バージョン管理ができない
エクセル活用の課題4個目はバージョン管理ができないことです。
バージョン管理とは、いつ、誰が、どのような変更をしたのかを管理することを指します。
この機能がないと、エラーやミスが発生した時に、原因を特定し、修正することが難しくなります。
特に、複数人でファイルを共有する際には、どのバージョンが最新かの管理が難しくなるため、古いバージョンのファイルが誤って使用されたり、更新漏れが生じたりする可能性があります。
社外連携の難しさ
エクセル活用の課題5個目は社外連携の難しさです。
利用しているツールがそもそもMicrosoft製品出ない場合や、使っているバージョンが違ったり、OSが違ったりして表示形式が崩れたり、ファイルがうまく作動しない場合もあります。
働き方が多様化する今、エクセルファイル一つでも、常に良い状態の連携を保つのは難しくなっています。
働き方改革の壁にも
エクセル活用の課題6個目は働き方改革の壁になっている点です。
エクセルを社内業務で活用する場合は、社内のイントラネットや共有ネットワーク上にファイルを保存する場合が多いため、リアルタイムでの更新や、共同編集ができません。
エクセルをメインにした業務でテレワークやリモートワークを行おうとした場合には、環境自体を見直す必要が出てしまいます。
脱エクセルで得られるメリット

属人化を防げる
脱エクセルで得られるメリット1個目は属人化を防げることです。
システム化することで、業務の属人化を防ぎ、引き継ぎや共有が容易になります。
例えば、社内の誰でもアクセスできるクラウドベースのアプリケーションを使用することで、特定の人物に依存しない業務プロセスを構築できます。
また、システム化することで、業務フローが明確化されるため、引き継ぎや見える化がしやすくなります。
マクロや関数が壊れないため、業務が滞らない
脱エクセルで得られるメリット2個目はマクロや関数が壊れないため、業務が滞らないことです。
システム化することで、先ほど課題の章であげたマクロや関数が壊れることを防ぐことができます。
マクロや関数が壊れる原因は、それらのロジックの一部になっているセルになにかを入力してしまうことがほとんどです。
システム化をすることで、そもそもロジックがユーザー側に影響されることがなくなるため、このようなことを防ぐことができます。
また、エクセルのバージョンアップに伴ってマクロや関数が壊れることもありません。
共同編集やリアルタイム編集も可能に
脱エクセルで得られるメリット1個目は共同編集やリアルタイム編集が可能という点です。
脱エクセルの方法がクラウドサービスを活用したものの場合、複数人で同時に作業を行うことができます。
例えば、SaaSツールやノーコードツールで作成したアプリを活用すれば、リアルタイムで業務を遂行することができます。
これにより、チームのコラボレーションが向上し、作業効率が高まります。
権限設定も可能に
脱エクセルで得られるメリット2個目は権限設定が可能になることです。
エクセルでは、ファイルを共有する際に詳細な権限の設定が難しく、特に役職ごとや階層ごとといった設定は難しいです。
しかし、システムを導入することで、データへのアクセス権限を細かく設定できるようになります。
例えば、特定のユーザーグループにのみ閲覧権限を与え、編集権限は限られた人だけにするといった制限をかけることができます。
脱エクセルをする方法とは?

各業務専用のアプリ・SaaSを使う
脱エクセルをする方法1つ目は、各業務専用のアプリや、SaaSを使うことです。
例えば、プロジェクト管理ツールであればJiraやWrikeといったツールがありますし、顧客管理ツールはいわゆるCRMアプリケーションを活用すれば、業務プロセスを効率化できます。
各業務専用のアプリやSaaSを使うメリットとしては、ありものを活用できるため、導入するための費用を抑えることができる点です。
逆にデメリットとしては、各ツールのシステムや使い方が決まっているため、複雑な業務や一般化されていないような業務に適用することが難しいことです。
自社専用のシステムを構築する/してもらう
脱エクセルをする方法2つ目は、自社専用のシステムを構築する、またはしてもらうことです。
いわゆるスクラッチ開発で、プログラミング言語を使って自社専用のアプリケーションを作成します。
これはなかなか自社で構築するのは難しいので、システムベンダーに依頼して作ることがほとんどとなるでしょう。
自社専用のシステムを構築するメリットは、オーダーメイドでシステムを作り上げるため、自社の業務に合わせたアプリケーションを作成できる点です。
逆にデメリットとしては、導入するために開発をする必要があるため、コストも時間もかかってしまうことです。
【おすすめ】ノーコードツールでまるっと脱エクセル
脱エクセルをする方法3つ目は、ノーコードツールを使って自社用のアプリケーションを作成することです。
ノーコードツールとは、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でシステムを構築できるツールです。
ノーコードツールを活用することで、プログラミングや専門的な知識がなくても自社でアプリケーションを開発できたり、外注する場合もスクラッチ開発よりコストを低く開発してもらうといったことが可能です。
そのため、コストやリソースを抑えて、なおかつ自社専用のアプリケーションを構築することが可能です。
また、各業務に合わせたツールの導入をしようとすると、それぞれの部署や業務に対してツールの導入が必要となり、ITツールの乱立が発生してしまいます。
しかし、ノーコードツールで自社で開発するノウハウを習得することで、多岐にわたる部署や業務をまるっと脱エクセルすることができるのです。
脱エクセルの進め方

1現状の把握:エクセルが使われている業務の洗い出し
まずは現状の把握で、どの業務でエクセルが使われているかを明確にします。
各部署で使用されているエクセルファイルの目的、内容、使用頻度などを詳細に調査します。
この段階で、エクセルの使用がもたらす問題点や非効率性も明らかになるのと同時に、解決策を考える際にどの程度の効果が見込めるかを算出するベースにもなる重要なフェーズです。
優先順位づけ:脱エクセルする優先順位をつける
現状の把握をしたら、次はどの業務から脱エクセルをするかの優先順位を決めます。
どの業務が最も効率化の恩恵を受けるか、またはリスクが高いかを評価し、順序をつけていきます。
ここで重要なのが、初めて脱エクセルをする場合は、効果よりも実現性を重視することです。
もちろんROIのように投資対効果を求めることも重要なのですが、継続的に脱エクセルを進める上では、最初の一歩目で成功体験を持ってもらうことが重要です。
そのため、初めての取り組みとして選ぶ際は実現性を重要視して優先順位をつけるとよいでしょう。
解決策の策定:SaaSやツールの選定、または開発方法の選定
優先順位をつけたら、個別の業務に対して脱エクセルの方法を選定します。
各業務の専門ツールがあるのかを調査したり、自社で開発をするべきかなどを検討します。
また、ノーコードツールを選定する場合は、一つの業務だけでなく、今後さまざまな業務の脱エクセルも選定したツールで対応する必要があるため、慎重にツールを選定する必要があります。
導入または開発
解決策が決まったら、実際にツールの導入や開発を行います。
この段階では、社内のIT部門や外部のツールベンダー、開発パートナーと協力して、スムーズな移行を目指しましょう。
ここで要件のすり合わせなどをする際に、現場部門にITリテラシーがないと、会話が噛み合わなかったりして、ベンダーに頼りきりになってしまいがちです。
しっかりと自社が主導することを念頭に、ベンダーと同じ目線で会話ができるようなリテラシーを身につけておく必要もあります。
運用・保守
導入後は、運用と保守を行いながら、継続的な改善を目指します。
これには、ユーザーからのフィードバックを受け入れ、システムのアップデートや改善を行うことが含まれます。
今までの業務やその方法を変えることになるので、現場にはストレスが発生します。
このストレスをうまく乗り越えるために、運用し始める際には現場のケアをすることが重要です。
ケアを怠ってしまうと、前のエクセルに逆戻りしてしまったり、導入や開発したツールが使われないままになってしまうことになります。
脱エクセルを社内で推進する上での留意点

エクセル文化は根強い
留意点1つ目はエクセル文化は根強いということです。
長年使われてきたエクセルからの移行は、社内でのかなり大きな変化となります。
そのため、なぜ脱エクセルをするのか、脱エクセルをするとどのようなメリットがあるのかをちゃんと現場に対して腹落ちさせる必要があります。
腹落ちをしないと、結局エクセルから抜け出せなくなってしまったり、導入したツールを無駄にしてしまうことに繋がります。
文化や組織風土の改革にも近い取り組みとなるので、変革マネジメントがとても重要になります。
[参考リンク-「腹落ち感」を形成するセンスメイキング理論とは!?組織でDXを推進していくための文化の醸成に活用しよう!]
現場から抵抗や反発が起きることも
留意点2つ目は、現場から抵抗や反発が起きる可能性があることです。
前述したとおり、脱エクセルは大きな変革のため、現場に対して大きなストレスがかかります。
そのため脱エクセルの動きには、従業員からの抵抗や反発が起きることもあります。
スティーブンロビンスの提唱する変革への抵抗11パターンとい概念がありますので、どのような抵抗が起こり得るのかをしっかり理解して、対策を練る必要があります。
[参考リンク-組織変革への抵抗の11パターンとは!?DXへの活用や具体的な対策まで徹底解説!]
ツールを正しく選定・開発しないとマイナス効果に
留意点3つ目はツールを正しく選定・開発しないと取り組み自体がマイナス効果になってしまう点です。
不適切なツール選定や開発は、逆に業務効率を下げることになりかねません。
そのため、慎重な選定と、適切な開発パートナーとの協力が求められます。
また、変革の最初のフェーズで失敗体験をしてしまうことで、その後同じような取り組みをしようとした時に現場からの抵抗が大きくなってしまうことにもつながります。
そのため、はじめの頃は実現性が高く、効果もある程度見えやすい業務から脱エクセルするとよいでしょう。
まとめ-自社に知見のある人がいない場合は専門家に相談を-
「脱エクセル」は、単なるツールの変更ではなく、業務プロセスの根本的な見直しを意味します。
この記事を通じて、エクセルからの脱却がもたらすメリットと、それを実現するための具体的なステップを理解し、自社のDXを成功に導く一助となれば幸いです。
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これから業務改善をしていきたいが、知見がある人がいなかったり、どんなツールを選んだらよいかお困りの際は、ぜひお声かけをいただければと思います。