デジタイゼーションとデジタライゼーションは、どちらもデジタル化という意味を持つ言葉ですが、その内容や目的には大きな違いがあります。しかし、この違いを正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。この記事を読むと、デジタイゼーションとデジタライゼーションの定義や具体的な事例、経済産業省の定義やDX推進担当者にとっての重要性など、両者の違いを徹底的に理解できるようになります。デジタイゼーションとはデジタイゼーションとは、アナログな情報や物理的なプロセスをデジタルな形式に変換することです。例えば、紙の書類や写真をスキャンしてデータ化したり、音声や映像を録音・録画してファイル化したりすることがデジタイゼーションの一例です。デジタイゼーションは、デジタル化の最初のステップであり、デジタル技術を活用するための前提条件となります。デジタルな形式に変換された情報やプロセスは、その後にさらなるデジタル技術を使って分析したり、改善したりすることで、新たな価値を創出したりすることができます。そのようなステップに進行する前には、現状アナログで管理されている資料や業務をデジタルに置き換えるプロセスが必要であり、それこそがデジタイゼーションです。デジタイゼーションは、DXを達成したい目的以外でも、コロナ禍でのテレワークやオンライン教育などのニーズが高まったことで、重要性が増しています。デジタイゼーションの具体的な事例次に、デジタイゼーションの具体的な事例を見ていきましょう。紙の作業をデジタイゼーション:スマートフォン・タブレットの導入紙の作業は、印刷や配送、保管などのコストがかかるだけでなく、紛失や破損のリスクもあり、修正や追記がしにくく、共有や検索も困難です。紙の作業をデジタイゼーションする方法として、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの導入があります。モバイルデバイスを使えば、紙の書類やレポートをカメラで撮影してデータ化したり、契約書や申請書などのフォームをデジタルで作成・送信したりすることができます。これにより、紙の作業にかかるコストやリスクを削減するとともに、作業の効率や質を向上させることができます。具体例で言うと、タブレットで行う電子契約などが挙げられます。紙で管理していた契約書書をデジタルに置き換えることで、保管場所や印刷する紙などのコストを削減でき、データ化することによって検索性も向上します。また、クラウドストレージサービスも同時に活用することで、外出先で契約をすることができたり、事務所にいなくても事務作業ができたりと、働き方改革をしやすくなります。会議をデジタイゼーション:オンライン会議会議には、場所や時間の制約や、参加者の準備や移動の手間などの課題もあり、会議の内容や結果を記録することにも手間がかかります。会議をデジタイゼーションする方法として、オンライン会議を利用することがあります。オンライン会議を使えば、場所に関係なく、必要な会議を実施することができます。また、オンライン会議では、画面共有やチャット、投票などの機能を使って、情報の共有や意思決定、問題解決を効果的に行うこともできます。また、遠方にいる人とも簡単にコミュニケーションがとれるため、各支店でのコミュニケーションや、ロケーションフリーな働き方の実現にも効果的です。決裁をデジタイゼーション:電子印鑑決裁は、ビジネスの上で大変重要なプロセスですが、印鑑やサインを使う決裁には、書類のやりとりや保管の手間やコスト、偽造や紛失のリスクなどの課題があります。決裁をデジタイゼーションする方法として、電子印鑑を利用する方法があります。電子印鑑を使えば、書類や契約などに対して、紙を印刷せずに、デジタル上で決裁することができます。これにより、決裁にかかる手間やコストやリスクを削減するとともに、決裁のスピードやセキュリティを向上させることができます。また、クラウドサービスを活用することで、オンラインでの決裁も可能になるため、リモートワーク化でも迅速な決済を遂行することができます。デジタイゼーションの目的とメリットデジタイゼーションの目的は、デジタル技術を活用するための準備をすることです。デジタイゼーションによって、アナログな情報や物理的なプロセスをデジタルな形式に変換することで、その後にデジタル技術を使って、より高度な分析や改善、新たな価値の創出などを行うことができます。また、デジタイゼーションのメリットは、以下の3つです。1:働き方改革がしやすくなるデジタイゼーションによって、紙の作業や会議や決裁などのプロセスをデジタル化することで、場所や時間に関係なく、柔軟に働くことができます。これは、テレワークやフレックスタイムなどの働き方改革を推進するのに有効です。働き方改革は、従業員のモチベーションや生産性を高めるだけでなく、コロナ禍での感染防止や環境負荷の軽減にも貢献します。2:情報を探しやすくなるデータの整理方法を確立することが前提にはなりますが、デジタイゼーションによって、紙の書類やレポートなどの情報がデジタル上で整理されることで、検索がしやすくなります。これは、情報の再利用や共有を促進するのに有効です。情報の再利用や共有は、暗黙知の形式知による知識の蓄積や伝承、イノベーションの創出につながる第一歩です。3:コストが削減できるデジタイゼーションによって、紙の作業や会議や決裁などのプロセスをデジタル化することで、印刷や配送や保管などのコストを削減することができます。また、作業の効率や品質が向上することで、作業時間の短縮や、人的ミスを削減することができます。ここで削減されたリソースを活用して、次のステップとなるでジタライゼーションや新しい価値の創出を行うことが良い流れとされていますので、この流れを作れるようにまずはデジタイゼーションを推進していきましょう。デジタライゼーションとはデジタライゼーションとは、デジタイゼーションの次のステップとして、デジタル情報やプロセスを活用して、ビジネスの価値を高めたり、業務の効率化を図ることです。例えば、データを分析して新たな知見を得たり、プロセスを自動化して効率化したり、新しいサービスや製品を開発したりすることがデジタライゼーションの一例です。デジタライゼーションは、様々な分野で行われており、AIやIoT、クラウドなどの先進的なデジタル技術の発展や普及によって、デジタライゼーションの可能性や必要性が高まっています。次に、デジタライゼーションの具体的な事例を見ていきましょう。デジタライゼーションの具体的な事例デジタライゼーションの具体的な事例として、以下のようなものが挙げられます。紙の作業をデジタライゼーション:ノーコードツールの活用紙の作業をデジタライゼーションする方法として、ノーコードツールを活用することがあります。ノーコードツールとは、プログラミングの知識やスキルがなくても、ドラッグアンドドロップやテンプレートなどの簡単な操作で、アプリやウェブサイトなどを作成できるツールのことです。ノーコードツールで業務アプリケーションを作成することで、業務プロセス全体をデジタル化し、効率的に運用することができます。具体例は、下記の記事で詳しく紹介しているので、ぜひこちらを参照してください。[参考リンク-ノーコードとは?ローコードとの違いや流行の理由、メリットデメリット、向き不向きまで徹底解説!]会議のデジタライゼーション:日程調整アプリ・議事録AIの導入会議をデジタライゼーションする方法として、日程調整アプリ・議事録AIの導入があります。日程調整アプリとは、インターネットを通じて、参加者の都合の良い日時を調べたり、会議の予約や通知を行ったりすることができるアプリのことで、議事録AIとは、オンライン会議システムで得られる音声データをもとに、会話した内容の議事録をまとめてくれます。これらを活用することで、参加者全員の予定の調整、会議室の確保や参加者へのインビテーション、会議URLの発行、会議後の議事録の共有などが全て自動化され、非常に効率的に会議を運用することができます。決裁をデジタライゼーション:ワークフローシステムの導入決裁をデジタライゼーションする方法として、ワークフローシステムを導入することがあります。ワークフローシステムとは、書類や契約などの決裁プロセスをデジタル化して、自動化や最適化を行うシステムのことです。社内稟議のフローをデジタルで構築することで、稟議全体の見える化、次の決裁者への通知、事務所から離れたところでの決裁などができ、決裁にかかる手間やコストやリスクを削減するとともに、決裁のスピードやセキュリティを向上させることができます。デジタライゼーションの目的とメリットデジタライゼーションの目的は、デジタル技術を活用することで、ビジネスや社会の価値を高めたり、業務の効率化を図ることです。デジタライゼーションによって、デジタルな情報やプロセスを分析したり、改善したりすることで、既存の価値を最大化したり、新たな価値を創出したりすることを目指します。また、デジタライゼーションのメリットは、以下のようなものがあります。自動化で作業が効率化されるデジタライゼーションによって、紙の作業や会議や決裁などのプロセスを自動化することができます。自動化とは、人の手を介さずに、コンピュータや機械が作業を行うことです。自動化によって、人が単純な作業から解放されて、より創造的な作業に集中することができます。ヒューマンエラーを減らせる紙の作業や決裁などのプロセスをデジタル化することで、ヒューマンエラーを減らすことができます。ヒューマンエラーの発生は、作業の品質や信頼性を低下させるだけでなく、場合によっては、損害や事故につながることもあります。デジタル化によって、作業の入力や確認や記録などを正確に行えるため、そのようなリスクを軽減することができるのです。並列作業で時短が可能になるデジタライゼーションによって、紙の作業や会議や決裁などのプロセスが自動化され、作業を並列化することができます。並列化によって、作業全体の時間を短縮することができ、作業の優先順位や依存関係を柔軟に変更することもできます。例えば、紙の請求書情報を手入力でエクセルに転記するような作業を経理システムとRPAを活用してデジタライゼーションした場合には、業務自体を自動化し、RPAが処理をしている最中に別の作業を並列で行うことができ、業務全体の時間やリソースを削減できます。また、ヒューマンエラーが減ることで、決算書や法人税の計算のずれなど、信用に関わるリスクをできるだけ減らすことができます。デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いデジタイゼーションとデジタライゼーションは、どちらもデジタル化という意味を持つ言葉ですが、その内容や目的には大きな違いがあります。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、経済産業省の定義やDX推進担当者にとっての違いと重要性について解説します。経済産業省の定義による違い経済産業省は、デジタル化の定義と分類という資料の中で、デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いを以下のように説明しています。デジタイゼーションとは、アナログな情報や物理的なプロセスをデジタルな形式に変換することである。デジタライゼーションとは、デジタルな情報やプロセスを活用して、ビジネスや社会の価値を高めることである。つまり、デジタイゼーションは、デジタル化の前提条件となる変換のプロセスであり、デジタライゼーションは、デジタル化の最終的な目標となる価値の創出のプロセスであると言えます。[参考リンク-経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは!?DXとの関連や対策方法までわかりやすく解説します!]デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いデジタイゼーションとデジタライゼーションの違いを、もう少し具体的に見てみましょう。以下の表は、両者の違いを比較したものです。項目デジタイゼーションデジタライゼーション定義アナログな情報や物理的なプロセスをデジタルな形式に変換することデジタルな情報やプロセスを活用して、ビジネスや社会の価値を高めること目的デジタル技術を活用するための準備をすることデジタル技術を活用することで、既存の価値を最大化したり、新たな価値を創出したりすることこの表からわかるように、デジタイゼーションとデジタライゼーションは、それぞれ異なる段階や目的を持つプロセスであり、単に同じ意味の言葉として使うことはできません。DX推進担当者にとっての違いと重要性DXを推進するには、デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いを正しく理解し、適切に実施することが重要です。デジタイゼーションは、DXの前提条件となるプロセスである。デジタイゼーションを行うことで、デジタル技術を活用できる環境を整えることができ、DXの第一歩として非常に重要である。デジタライゼーションは、デジタル技術を活用して、ビジネスの価値を高めたり、新しい価値を創出することができる。DXの本質として重要であるが、前提としてのデジタイゼーションがなければ実現できない。以上のように、デジタイゼーションとデジタライゼーションは、DXにおいて、それぞれ異なる役割や意義を持つプロセスであり、両者をバランスよく進めることが、DXの成功につながります。特にデジタイゼーションはトップダウン的に進めることはできても、デジタライゼーションは業務プロセス自体の改善などをしないといけないため、現場の協力が必要不可欠となります。まとめこの記事では、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」という言葉の違いについて、経済産業省の定義や具体的な事例、DX推進担当者にとっての違いと重要性などを徹底解説しました。DXを進める上で、デジタイゼーションから行い、そこから得られたデータや情報でさらなるビジネスや価値の高度化をおこなっていくことがデジタライゼーションでした。これからDXを推進する企業はデジタイゼーションから、デジタイゼーションがある程度進んでいる企業はデジタライゼーションの検討を進めることで、現状をより高めることができると思います。あなたのDXに幸あれ!