デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、多くの企業がクラウド技術の導入に踏み出しています。
しかし、クラウド導入には多くの課題があり、特にセキュリティやコスト管理、人材育成などが挙げられます。
これらの課題を解決し、クラウドの利用を最大限に活かすためには、組織全体での戦略的なアプローチが必要です。
そこで注目されているのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)の概念です。
この記事では、CCoEが何であるか、その原則、役割、そして実際の事例を通じて、CCoEがDXの内製化にどのように貢献しているのかを徹底的に解説します。
ぜひ最後までお読みください。
CCoEとは!?

CCoEとは
CCoEとは、クラウド技術を組織全体で効果的に活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための中核となる組織です。
CCoEの役割は多岐にわたり、クラウド導入の計画から運用、セキュリティの確保、人材育成に至るまで、企業のクラウド戦略を総合的に支援します。
そもそもCoEとは
CoE(Center of Excellence)は、組織内で特定の領域やテーマにおいて専門的な知識やスキルを集約し、最適な戦略やプロジェクトを共有・推進する組織のことを指します。
CCoEはこのCoEをクラウドに特化させた組織として定義されています。
CCoEの原則

クラウドサービスの提供と活用の推進をしているAWSでは、CCoEの原則を2018年のサミットで以下のように提唱しました。
リーダーシップ
CCoEは、クラウド導入におけるリーダーシップを担い、目標設定から戦略立案、実行計画の策定までを主導します。
また、社内のクラウド化に関する意識改革を促し、クラウドファーストの文化を醸成する役割も果たします。
オペレーション
クラウドサービスの選定から導入、運用に至るまでのプロセスを管理はもちろん、現場の状況や業務プロセスを理解している状態が求められます。
また、クラウド利用に関するベストプラクティスの確立と共有も重要な任務です。
インフラストラクチャー
CCoEは、クラウドインフラの設計と構築を行い、安定した運用環境を提供します。
PaasやIaaS、SaaSと多くのクラウドサービスやそのカテゴリがある中で、適切なものの選択し、組み合わせて提供することが求められます。
これには、パフォーマンスの最適化やコスト効率の良いリソース管理が含まれます。
セキュリティ
クラウド環境におけるセキュリティポリシーの策定と実施を行い、データの保護とプライバシーの確保を図ります。
セキュリティリスクの評価と対策の実施もCCoEの重要な役割です。
アプリケーション
アプリケーションのクラウド対応を支援し、クラウドネイティブな開発と運用を促進します。
これには、アプリケーションの移行計画の策定や、クラウドサービスとの統合が含まれます。
CCoEが求められる背景

クラウドへのシフトとDX推進の潮流
CCoEが求められる背景1つ目はクラウドへのシフトとDX推進の潮流があることです。
企業が競争力を維持し、イノベーションを起こすためには、クラウド技術の活用が不可欠です。
特にDXやデジタル活用の文脈ではクラウドの概念は切っても切れない関係となっており、レガシーシステムをクラウドにシフトしたり、提携業務をSaaSで効率化したりとさまざまなクラウド活用が推進されています。
CCoEは、このクラウドへのシフトを戦略的に推進し、DXを成功に導くための支援を行います。
クラウドネイティブ実現への課題が多い
CCoEが求められる背景2つ目はクラウドネイティブ実現への課題が多いことです。
クラウドネイティブなアプローチは、スケーラビリティや柔軟性を提供しますが、その実現には技術的な課題が伴います。
CCoEは、これらの課題に対するソリューションを策定・構築し、クラウドネイティブな環境へのシフトチェンジを推進します。
また、クラウドシフトにおける組織的な変革も必要となるため、各現場との調整や、クラウド移行の推進も求められます。
セキュリティーの担保
CCoEが求められる背景3つ目は、セキュリティーの担保が求められている点です。
DXの推進により、クラウドサービスの利用が増えるにつれて、セキュリティリスクも高まります。
CCoEは、セキュリティの専門知識を持ち、企業のクラウド環境と情報を保護するための戦略を策定します。
従量課金制による予算管理とガバナンス
CCoEが求められる背景4つ目は、従量課金制による予算管理の難しさと、ガバナンスです。
クラウドサービスは従量課金制のものが多く、複数のソリューションを乱立している状態になると予算管理が煩雑になり、課題となりがちです。
CCoEは、クラウドシフトの推進をしながら、コスト管理とガバナンスのフレームワークを構築し、適切な予算配分と利用監視を行うことが求められます。。
CCoEの役割

クラウドの導入・活用推進のリーダーシップをとる
CCoEの役割1つ目は、クラウド技術の導入においてのリーダーシップです。
具体的には、次のような役割を果たします。
目標設定と戦略立案
CCoEは、クラウド導入の目標を明確にし、戦略的な計画を策定します。どのクラウドプロバイダーを選定するか、どのサービスを利用するかなど、組織全体での方針を決定します。
社内の意識改革
CCoEは、社内のステークホルダーに対してクラウドファーストの文化を浸透させる役割を果たします。クラウド技術の利点や重要性を共有し、全社員がクラウドを活用する意欲を高めます。
クラウド活用に関するルールの策定・運用
CCoEの役割2つ目はクラウド活用に関するルールの策定と運用です。
CCoEは、社内のクラウド活用に関するルールやガイドラインを策定し、運用します。
これには、セキュリティポリシー、コスト管理のルール、クラウドサービスの選定基準などが含まれます。
また、これらのルールを遵守するための教育や監視、仕組みの整理も行います。
クラウド人材の育成
CCoEの役割3つ目は、クラウド技術に詳しい人材の育成です。
クラウドエンジニアやアーキテクト、セキュリティ専門家など、クラウドに関するスキルを持つ人材を育て、CCoEの機能を強化することはもちろん、
現場レベルでクラウドを活用できる人材を育成し、現場からのボトムアップできなクラウドシフトの下支えも行います。
クラウドに関するナレッジの集積・共有
CCoEの役割4つ目は、クラウドに関するナレッジの集積と共有です。
クラウドに関する知識やベストプラクティスを集め、集積し、組織内で共有します。
これにより、クラウド導入における課題や躓くポイントが明確となり、現場や他のクラウド導入の際の問題解決や効率化が図られます。
CCoEの事例

大日本印刷(DNP)
大日本印刷株式会社(DNP)のCCoEは、組織横断型の社内コミュニティとして、DNPグループのクラウド利活用を推進しています。
2018年4月に設立されたCCoEは、クラウドを安心・安全に利用するためのセキュリティ・ガバナンスの確立、共通アセットの開発、人材育成に重点を置いて取り組んでいます。
セキュリティ・ガバナンスの確立では、ガイドラインの策定を通じて、セキュリティや運用管理の基準を設けています。
共通アセットの開発においては、業務機能の共通サービスを開発し、効率的なクラウド利用を支援しています。
また、人材育成では、オリジナル研修やハッカソンを通じて、社員のクラウド技術に関する知識とスキルの向上を図っています。
CCoEは、社内外の最新情報を共有する「場」の創出にも注力しており、HACK WITH シリーズなどのハッカソンイベントを全国各地で開催しています。
トヨタ
トヨタ自動車株式会社(Toyota)は、デジタルトランスフォーメーション(DX)とデータ活用の加速を目指し、Cloud Center of Excellence (CCoE) を2022年に設立しました。
CCoEは、特に開発者の仕事を軽減することを重視しながら、クラウド・データプラットフォームの構築、プロジェクト支援と人材育成、コミュニティの形成などを取り組んでいます。。
クラウド・データプラットフォーム構築では、*CCoEは安全かつ柔軟なクラウド利用環境を整備し、開発者がクラウドを効果的に活用できるようにしています。
プロジェクト支援と人材育成では開発者がクラウドを使いこなすための技術支援や教育を提供しています。
コミュニティ形成では、クラウド活用についてのコミュニティを運営し、*仲間との相談や情報共有を通じて、クラウド活用を促進しています。
CCoEのビジョンは、ジャストインタイムで安心・安全なクラウド環境を提供し、最高の開発者体験を実現することとされています。
CCoEのメンバーに必要なこと

CCoEの成功には、スキルだけでなく、メンバーのマインドセットが非常に重要です。以下に、AWSが提唱した、CCoEメンバーに求められるマインドセットを見ていきましょう。
クラウドを使ってより良くしたいという意欲
CCoEメンバーは、クラウド技術を活用して組織の業務を改善し、イノベーションを生み出すことに強い意欲を持つ必要があります。
これは、目的思考とも言え、CCoEを立ち上げる理由が「クラウド環境を整備する」ことでもなければ、「クラウドの活用を推進すること」でもなく、クラウドを活用して会社に変革を起こすことであり、その目的意識をしっかりと持てていることが重要だとAWSでは定義しています。
また、マズローの欲求5段階説にも言及しており、CCoEのメンバーに対して、インセンティブを与えたり、評価をするようなことをしたとしても、上から2番目の承認欲求しか満たすことはできず、本当に必要なのは一番上の自己実現欲求であり、その実現すべき目標が、先ほどの目標であるべきだとしています。
利他的であること
AWSは、CCoEの失敗パターンとして、CCoE自体がクラウド活用のブロッカーになってしまう事例を挙げています。
その事例ではガバナンスや管理のルールなどを徹底しすぎてしまい、クラウドを活用することが煩雑化し、利用をしようと思ってもらえなくなってしまうといいます。
ここでの利他的であることは「自己中心的であってはいけない」という意味よりも、利用側の視点を持つことを示唆しています。
CCoEに求められることは多岐に渡りますが、それがCCoEはこうあるべきだといった考えにならないように、企業や組織をクラウドでどうすれば良くできるのか、みんなはどうしたら使いやすくなるのか、という視点を持つ必要があるのです。
変化を楽しむこと
クラウド技術は常に進化しており、新しいサービスや機能が次々と登場します。
CCoEメンバーは、このような変化を楽しみ、新しい技術を積極的に学び、適応することが重要です。
また、AWSでは、この変化を組織的な観点でも楽しむ必要があると提言しています。
これは、現在レガシーシステムが多い日本の中で、新しい技術へシフトする組織的な難しさに対してもCCoEは立ち向かう必要があり、いわゆる「イケてる仕事」だけでなく、非常に泥臭いことも楽しみながら取り組む必要があると伝えています。
CCoEとノーコードとの親和性:NCoEの提唱

ノーコード開発は、プログラミングの知識がなくてもアプリケーションを開発できる手法として注目されています。
CCoEとノーコード開発は、以下の点で親和性があり、ふえんでは、CCoEをノーコード活用に特化させたNCoEを提唱しています。
ノーコードツールの多くがクラウドソリューションである
ノーコードツールは、クラウドベースで提供されることが多く、CCoEはこれらのツールを効果的に管理し、活用することができます。
LIXIL社のCCoEでは実際にGoogleAppsheetの活用推進などもしており、クラウドの広い概念の中にノーコードツールも包含されていることがわかります。
ノーコードツールも従量課金制が多く予算管理が難しい
ノーコードツールの多くは従量課金制を採用しており、クラウドソリューションと同じく、予算管理の観点で統率する組織が必要不可欠です。
NCoEはこれらのコストを管理し、予算内での利用を確保する役割を果たします。
ノーコードツールや、それによって開発されたアプリが乱立しやすい
ノーコード開発により、多くのアプリケーションが短期間で開発される可能性があります。
NCoEは、これらのアプリケーションの管理とガバナンスを行い、野良アプリの乱立を防ぎます。
まとめ:ノーコード文化の定着には、NCoEが必要
上記のように、ノーコード文化を定着させるためには、CCoEと同じく、NCoEが必要不可欠です。
ふえんでは、NCoEの立ち上げや、NCoEのメンバーとなる人材の育成などを支援しています。
NCoEは、ノーコードツールを組織全体で効果的に活用し、DXを推進するための重要な組織です。
CCoEの原則、役割、事例を理解することで、NCoEに必要な部分も見えてきます。
ぜひこの記事を参考に、DXを成功に導いてください。
NCoEや、ノーコード人材の育成にご興味のある方は、一度お問合せを頂けますと幸いです。