CoE:センターオブエクセレンスとはCoEの概要「CoE(Center of Excellence)」は、企業内で優れた人材、技術、ノウハウ、設備などを集約した組織やグループを指します。この組織が作られることにより、組織を横断したプロジェクトや取り組みにおいて、社内の情報や知識を共有・管理でき、業務の効率化や適切な運営が可能となるとされています。CoEの歴史「CoE(センター・オブ・エクセレンス)」の起源は、1940年代から1950年代のアメリカ・スタンフォード大学にさかのぼります。当時、スタンフォード大学は卒業生の多くが東海岸に流出し、優秀な人材が西海岸に残らないことに悩んでいました。そこで同大学の卒業生であるフレデリック・E・ターマン(Frederick Emmons Terman)が1946年に工学部長として戻ってきた際、大学の地位向上のために施策を講じました。彼はアメリカ全土から優秀な教授を招聘し、最新の設備を導入するなど環境を整えたのです。この施策によって創られた研究拠点が、CoEの始まりとなりました。スタンフォード大学周辺には産業クラスター(シリコンバレー)が形成され、この成功事例をもとに、さまざまな大学や機関でCoEが推進されるようになりました。3ピラーモデルとは「3ピラーモデル」は、ビジネスの人事領域において戦略的な人事を実現するための考え方です。このモデルは、HRBP(Human Resource Business Partner)、SSC(Shared Service Center)、CoE(Center of Excellence)の3つの柱から成り立っています。HRBP(Human Resource Business Partner):経営層のビジネスパートナーとして、事業目標達成に向けて戦略的な人材マネジメントを実行します。SSC(Shared Service Center):給与計算や福利厚生などの定型的な人事業務を集約し、効率化を図るシェアードサービスです。BPO(Business Process Outsourcing)の管理も含まれます。CoE(Center of Excellence):人事に関する専門家集団であり、人事KPIの管理や人事制度の策定、研修制度の整備などを組織横断的に推進します。このモデルにおいて、各柱の役割が明確に設定されており、「人事におけるビジネスへの貢献」「定型業務の効率化」「専門性の強化」といった側面が組織体制に組み込まれています。これにより、戦略人事の実現や積極的な人事施策の問題解決に寄与しています。DXで求められるDCoEDCoEとはデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に特化したセンターオブエクセレンス(CoE)です。急速に進むデジタル化やリモートワークの普及など、変化の激しい現代社会では、DX推進が不可欠なのは、周知の通りです。しかし、企業内の情報システムが各部署で運用管理されていたり、それを改善しようにも、日本企業の多くは連携が難しい縦割り組織の課題を有しています。こうした課題に対処するために、DX推進特化型のDCoEを設置・導入することで、組織を横断して情報やノウハウ、データを集約したり、社内の問題解決、業務効率化を推進することができるのです。CoE・DCoEの役割社内ナレッジの収集・整理組織内での情報共有が不十分な縦割り型の体制では、各部門が保有する貴重な情報やノウハウが活かしきれていないことが課題となります。そのため、中心となるCoE(Center of Excellence)が果たす重要な役割の一つは、社内の貴重な情報やノウハウを統合し、1箇所に集約することです。CoEは組織を横断し、社内に散在する情報やノウハウを網羅的に収集し、整理します。このプロセスにより、必要な情報やデータが整理されることで、企画や戦略の策定段階において的確な判断が容易になります。また、集約された情報は社内で容易にアクセスできるため、業務効率の向上や意思決定の迅速化にも寄与します。社内ナレッジの収集・整理は、組織全体の知識管理において重要なステップです。CoEが情報の収集や整理を通じて、組織全体の学習や成長を促進し、持続可能な競争力の構築に貢献していきます。ビジネス・DXにおける企画立案企業の成長を牽引するために不可欠な役割を果たすCoE(Center of Excellence)は、企画や戦略の立案において重要な役割を担います。社内における全社的・部門横断的な生産性向上はもちろん、新製品、新サービスの展開、新技術や設備の導入など、DXを促進する取り組みにおいて、CoEは企画立案から実行までをリードします。CoEが企画・戦略の立案において果たす役割は大きく、その重要性はますます高まっています。ビジネス環境の変化に対応し、競争力を維持・強化するためには、CoEがビジョンを持ち、戦略的な計画を立案し、的確な実行を行うことが不可欠です。トレーニング・技術支援CoE(Center of Excellence)には、新しい取り組みを全社的に展開するためのトレーニングのサポートや技術支援という重要な役割があります。特に、新しいITツールの導入に際しては、全社員が効果的に活用できるようにするための研修やマニュアル、社内勉強会などを提供します。こうした取り組みにより、全社的なツールのスムーズな導入と活用が実現され、業務効率の向上に寄与します。また、ノーコードツールなどのいわゆる市民開発的な動きにおいても、CoEは重要な役割を果たします。こうしたツールの活用を促進するためには、啓蒙活動が欠かせません。CoEは、IT導入の先にあるデータ活用やメリットを組織に浸透させるために、組織文化の醸成にも取り組みます。これにより、組織全体でのDXやデータ活用に対する意識が高まります。さらに、CoEは技術支援としても重要な役割を果たします。実行されている各プロジェクトに関する新たな課題や悩みに対して、技術面からサポートします。このような社内コンサルティングや技術支援により、プロジェクトの円滑な進行や問題解決が促進され、組織全体の業務効率や品質の向上に貢献します。トレーニングと技術支援は、CoEが組織内のイノベーションと成長を支援する重要な手段です。組織全体が最新の技術やツールを活用し、効果的に活動するためには、CoEの活動とサポートが欠かせません。全社的・部門横断的な業務プロセスの整理企業が描く戦略を実行するために、CoE(Center of Excellence)は組織全体の業務改善にも取り組みます。各部門を横断して、マニュアルの整備や不要な業務・分担の見直し、業務の可視化などの取り組みを行います。必要に応じて、業務プロセスそのものの構築やシステム化も担当します。また、CoEの任務の1つには、組織ごとに異なる業務工程の標準化も含まれます。これはCoEのような中枢組織ではないと難しく、各部門にまかせてしまうと、各部門ごとの文化の違いや認識のずれでハレーションがおきてしまったり、うまくすすまなかったりしてしまいます。中枢部門であるCoEが全社的かつ部門横断的なアプローチをとることによって、組織全体の業務プロセスが効率化され、ビジネスの競争力や持続可能性が向上します。CoEがリーダーシップを発揮し、組織の業務プロセスを整理し、最適化することで、企業は目標達成に向けてより効果的に前進することができるのです。部門間コミュニケーションの促進とイノベーションの促進CoE(Center of Excellence)は、組織内のイノベーションを促進する上で重要な役割を果たします。現在、多くの企業では縦割り組織が一般的であり、この縦割り組織は、業務内容などに基づいて組織を細分化することで、各部門が専門性を高めるメリットがあります。しかし、このような構造では視野が狭まり、新しいアイデアやクリエイティブな発想を生み出すことが難しくなるというデメリットもあります。ここでCoEが各部門のハブとなり、部門間の連携が強化されると、結果的に社内のイノベーションが促進されます。部門間のコミュニケーションが促進されることで、異なる専門知識や経験を持つ従業員がアイデアを共有し、協力して新しいプロジェクトや取り組みを進めることが可能になります。これにより、企業は革新的なソリューションやサービスを生み出し、競争力を高めることができます。市民開発におけるCoE推進で押さえるべきポイントCoEと各部門における役割の整理市民開発におけるCoE推進で抑えるべきポイント1つ目はCoEと各部門における役割の整理です。組織において理想的な役割と定義することは、まず始めに行うべき重要なステップです。この定義は、CoEを含むすべての部署に適用されるものであり、CoEに期待される役割と各部門での役割は異なります。例えば、DXのアイデアを出すことを現場部門へ、そのアイデアを具現化するために要件定義するのを現場部門内の推進担当者へ、そしてそのアイデアを開発するのをIT部門、その推進をマネジメントをするのをDCoE、といったように、自社のDXや市民開発において、どの部門がどの役割をになるかを明確に定義する必要があります。また、市民開発をこれから推進する場合は、その役割を段階的に定めることも重要です。市民開発の概念は、ノーコードツールを活用し、現場部門が自ら業務システムなどを企画・開発し、推進していく世界線を指しますが、一朝一夕ではそのような理想像には到達しません。そのため、先ほど出した例のように、まずはアイデアをだしてもらうまで、システムの改修依頼をだせるようになるまで、など、段階的に現場部門に求めるレベルを変更していくと良いでしょう。役割ごとの人材像の整理市民開発におけるCoE推進で抑えるべきポイント2つ目は、各役割に必要な人材像の整理です。役割をまとめたとしても、それを遂行するための人材や、その人材が持つべきスキルまで明らかにしないと、役割だけが先行してしまい、実がともわず、その組織はワークしません。そうならないためにも、役割ごとに必要な人材やその人材像や持つべきスキルを整理し、役割が果たす任務を遂行できる状態を明確に描く必要があります。これはDCoEであれば、デジタルスキル標準などを参考にし、どのようなスキルを持った人材が必要かを定義すると良いでしょう。[参考リンク-IPAの提唱するデジタルスキル標準とは!?概要からITパスポートとの違いまで徹底解説します!]教育方法の策定と実行市民開発におけるCoE推進で押さえるべきポイント3つ目は、、教育方法の策定と実行です。役割ごとに定義した人材像とそれがもつべきスキルを策定したら、その理想像と現状とのギャップを踏まえて、教育方法を立案します。また、教育方針の策定には、いつまでにどのような形で何名の人材を育成するかのロードマップの策定も含まれます。CoEを設置する場合は、求められるスキルの範囲が広く、深いため、長期的な計画を立案する必要がありますが、教育方針を策定する際には、求められるスキルや人物像が現実的かどうかを確認することも重要です。理想的なスキルや人物像が非現実的である場合、計画は失敗に終わる可能性があります。そのため、人物像の定義から始めて、教育方針を確実に策定していきましょう。教育方法の策定と実行は、組織の成長と競争力強化に不可欠です。CoEや各部門に対して適切な教育計画を策定し、実行することで、組織全体が必要なスキルを習得し、目標に向かって効果的に前進することができます。まとめこの記事ではCoE:センターオブエクセレンスについて解説してきました。CoEはDXや市民開発を実行する上でも非常に重要な概念のひとつです。この記事を参考にぜひDX推進をせいこうに導いてくださいね。あなたのDX推進に幸あれ!