デジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、企業の業務効率化を推進する大きな潮流となっています。
しかし、多くの企業がDXを進める中で、システム導入の高コストや複雑さ、または専門知識の不足に直面しています。
これらの課題は、特に中小企業やスタートアップにとって大きな壁となっており、そんな中で注目されているのが今CMでも話題になっているKintoneです。
この記事ではKintoneの概要からメリットや注意点、活用事例まで網羅的に解説します。
ぜひ最後までお読みください。
kintoneとは

kintoneの概要
kintoneは、ビジネスのデジタル化を推進するサイボウズ株式会社ノーコード製品です。
このクラウドベースのツールは、2024年の時点で、30,000社を超える企業がkintoneを導入し、毎月500社以上の新規顧客が加わるほどの人気を博しています。
kintoneの導入により、企業は多様なビジネスニーズに応じたアプリケーション開発が可能になります。
従来のアプリ開発が要求する専門知識や膨大な時間を必要とせず、直感的な操作で専用アプリを迅速に構築できるのです。これにより、企業は特有のビジネス課題に対する解決策を容易に見出すことができます。
サイボウズやGaroonとの違い
サイボウズ OfficeとGaroonは、サイボウズ株式会社が提供するグループウェアの中核製品であり、企業のコミュニケーションと協働を支える多様な機能を標準装備しています。
一方で、kintoneはこれらの製品とは異なるアプローチを採っています。kintoneの特徴はその高いカスタマイズ性にあり、ユーザーは必要に応じてアプリを選択し、自社の業務プロセスに合わせて柔軟にカスタマイズすることができます。
この運用の自由度は、特にビジネスプロセスが多岐にわたる企業や、特定の業務に特化したシステムを求める企業にとって大きなメリットとなります。
kintoneが注目される背景とDX
DXの推進には、業務プロセスの見直しとそれを支えるシステムの構築が不可欠です。
kintoneは、ノーコードツールとして、その両方を低コストで実現できるため、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。
また、経済産業省のDXレポートでも提示されているように、デジタル化の内製化はDXを推進する企業にとって大きな課題となります。
これを叶え、市民開発を推進することができるようになるためのツールとして、kintoneは注目が高まっています。
[市民開発とは内部リンク]
kintoneでできること

「アプリ」 業務アプリの作成
kintoneでは、業務システムを「アプリ」と呼びます。
このアプリを開発するために、業務ごとに100種以上のテンプレートが用意されており、自社のニーズに合ったアプリを簡単に作成できるようになっています。
テンプレートを少しカスタマイズすれば、問い合わせ内容の共有や対応の割り当ての自動化など、業務プロセスを効率的に仕組み化できます。
さらに、情報共有、通知、承認機能を活用することで、社内の処理工程をスムーズに素早く進めることができます。
「スペース」 チームのコミュニケーション
kintoneの「スペース」とは、チームワークを強化し、プロジェクトの進行をスムーズにするためのコミュニケーション機能です。
この機能を利用することで、チームメンバーを選択し、特定のグループ内でのコミュニケーションを促進することができます。
また、関連するアプリケーションをスペースにリンクすることで、業務の流れを一元化し、効率的な情報共有を実現します。
文書ファイルやToDoリストの集約管理も、「スペース」の機能の一つです。
これにより、タスクの進捗状況や重要なドキュメントが一目で確認でき、業務の可視化と効率化が図れます。
さらに、「ゲストスペース」を活用すれば、社外のパートナーやクライアントとも円滑にコミュニケーションを取ることが可能になり、ビジネスの枠を超えた協働が実現できます。
「ポータル」 トップページの作成
kintoneの「ポータル」機能は、企業の情報の中心地を作ることができます。
ここでは、全社員が知っておくべき重要なお知らせや、達成を目指すべき目標数値などを一覧できます。
この集約された情報の表示は、組織全体の意識統一と目標達成に向けた動機づけを促します。
先ほどのアプリの章で触れたように、kintoneでは自身でアプリケーションを構築できますが、ここで作成したアプリケーションをこのポータルに配置することができます。
これにより、ユーザーは必要なツールへのアクセスを迅速化し、業務の効率を大幅に向上させることができます。
kintoneの「ポータル」はまさにその利便性を最大限に引き出すための設計となっています。
このように、kintoneの「ポータル」は、企業内の情報共有としてだけでなく、業務効率化のためのハブとして機能します。
kintone活用のメリット

ノーコードで簡単にアプリを開発できる
kintoneはノーコード開発ツールとして、ドラッグ&ドロップでアプリケーションを簡単に開発ができるようになっています。
従来、社内の業務をデジタル化し、カスタムメイドのシステムやツールを開発するには、プログラミングスキルを持った専門家が不可欠でした。
特に中小規模の企業や団体では、IT部門がないことが一般的であり、これがIT化の進展を妨げる大きな障壁となっていました。
しかし、kintoneの登場により、プログラミングの知識がなくても、業務に必要なアプリケーションを自ら作成できるようになりました。
[ノーコードとは内部リンク]
データを一元化しやすくなる
企業がビジネスに関連するあらゆるデータを一元的に管理するために、kintoneを活用できます。
社内ポータルから、業務アプリケーションを全てkintoneで包括することで、すべてのデータがkintone上に集約されるためです。
このクラウドベースのプラットフォームでは、データは安全に保存され、どこからでもアクセスできます。
例えば、販売チーム、マーケティングチーム、カスタマーサポートチームが同じ顧客データベースにアクセスし、情報を共有できます。これにより、情報の二重入力や矛盾を避け、データの整合性と透明性が保たれます。
さらに、重要なビジネスの意思決定を支援するためのリアルタイムなデータ分析とレポート作成も容易にすることができるようになります。
アプリケーションのカスタマイズがしやすい
kintoneの最大の特徴の一つは、その柔軟性にあります。
企業は自社のニーズに合わせてアプリケーションをカスタマイズでき、業務プロセスやワークフローを効率的に管理することが可能です。
例えば、人事部門は勤怠管理システムを自社のポリシーに合わせてカスタマイズし、承認プロセスやアラートを設定することができます。
このようなカスタマイズ性により、企業は自社の運用に最適なツールを作成し、業務の効率化を実現することができます。
移行やカスタマイズの手軽さは、他の業務に集中するための時間やリソースを確保することを可能にします。kintoneを利用することで、企業は業務の自動化と効率化を実現し、ビジネスの成長を加速させることができるのです。
コスト削減につながる
kintoneは、コストパフォーマンスに優れており、企業にとって大きなメリットとなっています。その理由を見てみましょう。
kintoneは比較的低コストで高品質なサービスを提供しています。中小企業から大企業まで、幅広い規模のビジネスに適しています。これにより、予算を気にせずに導入できます。
また、kintoneは柔軟性があり、必要に応じて機能を追加できるため、スタートアップ企業は基本的な機能から始め、徐々にシステムを拡張していくことができます。
企業の成長に合わせて必要な機能を追加できるため、長期的なコスト効率を実現できます。
少し違う観点として、開発コストの削減にも効果的です。
業務システムを開発する場合、多額の費用がかかります。特にフルスクラッチで開発する場合、数千万円の費用がかかることもあります。
しかし、kintoneでは追加料金なしで業務システム(アプリ)を作成できます。必要なだけアプリケーションを追加できるため、システム構築の費用を大幅に節約できます。
kintoneの料金

kintoneは、その透明性と柔軟性のある料金体系で、多くの企業から支持を受けています。
基本的なプラットフォーム使用料には、アプリケーションの作成、データ管理、そして基本的なカスタマイズ機能が含まれており、これらはユーザー数や利用する機能の範囲に基づいて計算されます。
料金は、企業のニーズに合わせて月額または年額で支払うことができるため、予算計画が立てやすいです。
小規模ビジネスの場合、限られた数のユーザーと基本的な機能から始めることができ、コストを抑えることが可能です。一方、大規模な組織や複雑なニーズを持つ企業は、追加のユーザー登録により、より多くの機能とサポートを享受できます。
スタンダードコース | ライトコース | |
---|---|---|
価格 | 月額1,500円/1ユーザー | 月額780円/1ユーザー |
アプリ数 | ~1,000個 | ~200個 |
スペース数 | ~500個 | ~100個 |
ゲストユーザー | 月額1,200円/1ユーザー | 月額580円/1ユーザー |
セキュアアクセス | 月額250円/1ユーザー | 月額250円/1ユーザー |
※記事公開時点の費用となりますので、詳細はkintone公式ページをご確認ください
kintoneでは、標準機能に加えて、企業の特定の要件に応じたオプション機能も提供されています。
これには、高度なレポーティングツール、APIアクセス、セキュリティ強化機能などが含まれ、追加料金で利用可能です。
例えば、特定の分析ニーズを持つ企業は、高度なデータ分析ツールを追加することで、そのニーズに対応できます。
また、APIアクセスを通じて他のシステムやアプリケーションとの統合を図ることで、ビジネスプロセスをさらに効率化することが可能です。
このように、kintoneの料金体系は、企業が成長し、変化するニーズに応じてスケールアップできるように設計されています。
これにより、企業は長期的な視点でコストを管理し、ビジネスの発展を支えることができるのです。
kintoneの活用事例

資生堂
株式会社資生堂は、IBM Notesで構築された掲示板やデータベース、Excelでの研究テーマ管理を使用していましたが、技術者不足によるメンテナンス困難、サポートベンダの乗り換えに伴う仕様書の不足、グローバル化に伴うインターフェースの英語化の必要性など、複数の課題が顕在化していました。
これらの課題に対応するため、資生堂はkintoneを基盤として採用しました。
kintoneは、Notesからの移行ツール「Smart at migration」を使用し、既存のNotes DBを効率的に移行することが可能でした。
また、研究テーマのExcel管理もkintoneに移行し、インターネットを通じて研究者全員が最新の情報を共有できるようになりました。
kintone導入により、資生堂は情報共有の基盤を大幅に改善しました。
各チームから収集していたExcelを統合する作業時間が大幅に削減され、情報管理の負担が軽減されました。
また、システム面では、クライアントアプリのインストールが不要となり、アカウント追加が容易になるなど、システム管理が簡素化されました。
これにより、資生堂はグローバルな環境での情報共有と研究テーマの進捗管理を効率的に行えるようになりました。
三菱重工業
三菱重工業株式会社は、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして多岐にわたる事業を展開していますが、デジタル化の加速が必要でした。
特に、カスタマーエクスペリエンスの向上が求められており、従業員の業務改善や顧客エンゲージメントの向上など、デジタルエクスペリエンスデザインの推進が課題となっていました。
この課題に対し、三菱重工業はkintoneを活用して環境を整えました。
Employee eXperience(EX)、Customer eXperience(CX)、Product Transformation(PX)の3つの領域に焦点を当て、特にEXとCXの領域で新たなプロジェクトを開始しました。
業務改善と業務システム構築をレベル分けし、現場に寄り添った組織作りを行い、迅速な改善を目指しました。
結果として、顧客ポータルや問い合わせ管理などのシステムがkintoneを用いて構築され、問い合わせ管理の一元化や顧客接点の強化、自己解決につながる環境の整備に成功しました。
また、FAQ情報の充実や業務改善アプリの開発により、業務効率化と顧客満足度の向上が実現しました。
これにより、時価総額の比率向上という経営目標にも貢献することができました。
ジヤトコ
ジヤトコはオートマチックトランスミッションの専門メーカーで、国内外に多数の拠点を持つ大企業です。 社内ではExcelやメールを中心に業務が行われており、特に調達管理部では毎年約700件の取引先に対して企業調査票の回収に4ヶ月もの時間がかかっていました。
kintoneとフォームブリッジを導入し、企業調査票をデジタル化しました。 取引先にはフォームのURLをメールで送信し、回答はkintoneに自動的に集約されるようになりました。
これにより、回収作業のスピードが2倍になり、工数は約1人月分削減されました。 その後、kintoneの効果を実感したメンバーが社内で積極的に利用を促進し、全社的な業務効率化への動きが広がっています。
kintone導入の注意点

アプリの性質や構造によっては管理が難しくなる
kintoneは、複数のアプリケーションを連携させることができる便利なツールですが、一定の制限があります。
特に、大規模なアプリケーションの作成や運用には適していない場合があります。例えば、1つのアプリケーションで扱えるデータ量には上限があり、これを超えると、システムに不具合が生じる可能性があります。
社内で扱うデータ量が多い場合、すべてのデータを1つのアプリケーションに集約することは困難かもしれません。
また、複数のアプリケーションを連携させる際には、データの同期を正確に行うことが重要です。連携の漏れがあると、データに齟齬が生じ、業務に支障をきたすことになります。
そのため、業務を漏れなく、かつ重複なくカバーする適切な数のアプリケーションを作成し、運用することが求められます。
アプリケーションの数が増えるにつれて、システム全体を統率し、管理する専任の担当者を置くことが望ましいでしょう。
拡張機能等を多く使うとコスト増につながる
社内の全ての業務をkintoneだけでデジタル変革(DX)することは、多くの場合、現実的ではありません。
企業規模が大きくなればばるほど、既存の基幹システムや会計システムを完全にkintoneに置き換えることも、多くの場合、実行可能ではないでしょう。
このような状況では、kintoneと他のシステムとの連携が鍵となります。
しかし、この連携を実現するためには、様々な機能拡張が必要になります。
これにより、アプリの作成、運用、管理がより複雑になる可能性があり、業務量が増加し、運用コストが上昇する可能性があります。
したがって、業務改善の結果と費用対効果を慎重に評価し、kintoneの活用領域を明確に設定することが重要です。
これにより、kintoneの利点を最大限に活かしつつ、コストを効果的に管理することができます。
現場のニーズや要求の整理が重要
kintoneを導入する際、最大の効果を得るためには、現場の業務プロセスに合わせた運用が不可欠です。
これを実現するためには、現場からの要望を理解し、継続的なフィードバックを取り入れながらシステムを適用することが求められます。
現場の声を聞き、業務改善の提案やアプリの改善案を積極的に取り入れることで、システム担当者と現場担当者の間で意見を擦り合わせ、より効率的な運用が可能になります。
結局のところ、kintoneの導入は単なる技術的なプロセスではなく、組織全体の協力とコミュニケーションが必要な取り組みです。
現場のニーズを正確に把握し、それに応じた適切なアプリケーションを開発することで、業務の効率化と組織の成長を実現することができます。
どれだけ良いシステムが作れても活用されないことも
kintoneでは、ノーコードで素晴らしいシステムを自社で作ることが可能ですが、もしとても良いシステムを作れたとしても、それが現場で活用されるとは限りません。
先ほどの現場のニーズに合っているかどうかという観点はもちろん、そもそも新しい仕組み自体を使ってくれない可能性もあり、実際に失敗事例として起きています。
これを防ぐためには、変革マネジメントが必要です。
ユーザーのトレーニングや啓発活動、システムの運用管理など、継続的な取り組みを持って、作られたシステムがちゃんと現場でワークする状態までサポートする必要があるのです。
[市民開発の成功ステップ内部リンク]
まとめ
この記事では、kintoneについて、概要から注意点まで徹底的に解説してきました。
開発が簡単にできるのがkintoneの強みでもありますが、管理の煩雑化や外部連携や扱うデータが増えることによるコスト増など、専門的な知識が必要な面もあります。
そんな中で、kintoneに精通した専門家からのアドバイスは、導入の効果を高める上で非常に有効です。
技術的な支援を受けることで、導入プロセスをスムーズに進めることができ、導入失敗のリスクを最小限に抑えることができます。